KTMが2023年4月25日~27日、イタリアのサルディーニャ島にて、新型ロードスポーツモデル・890SMTの国際試乗会を実施した。

このブランニューモデルの890SMTは、890アドベンチャー系のフレーム&スイングアーム、エンジンをそのまま使い、前後17インチホイール化したモデル。KTMでは、2013年ごろまで同じく“SMT”の名を冠したモデルをラインナップしており、約10年ぶりのSMTブランドが復活した事になる。

峠最強モデルがアドベンチャーベースで帰ってきた!

試乗して感じた最大のポイントは前後のサスペンションの出来の良さだ。通常、オフロード走行を想定するアドンチャーモデルには200㎜以上のストロークが与えられており、KTMアドベンチャーモデルは、メーカー各社の中で最もダート性能に拘ることもあり、ロード色の強い890アドベンチャーでも前後200㎜、さらにオフロード性能を高めた890アドベンチャーRとなると、前後240㎜ものストロークを持っている。一方、オンロードはというと押し並べて150㎜以下のモデルが多い。

890SMTのストリップ写真
890SMTのストリップ写真。890アドベンチャーのエンジン、フレーム、スイングアームをそのまま使っており、ステムも角度も変更していないとのこと。これにインナーチューブ径φ43㎜・ストローク180㎜の倒立フォークを組み合わせた。

さて今回の890SMTは前後のサスペンションストロークを180mmとアドベンチャーとロードスポーツモデルの中間に設定。このロードモデルとしては非常に潤沢なストロークを使って峠をガンガンに攻めるようなロードスポーツ向きのセッティングを施したというわけだ。

WP APEXオープンカートリッジ
ストローク180㎜を持つWP APEXオープンカートリッジタイプの倒立フォーク。インナーチューブ径は890アドベンチャーと同じφ43㎜(890アドベンチャーRはφ48㎜)。

KTMによる海外試乗会は、とにかく飛ばすことで有名なのだが、この890SMTの試乗会も全くその通りだった。とにかく右へ左へ切り返す目の回るようなコースが用意されており、このクネクネ道を先導ライダーに人に言えないような速度で引き回される(笑)。

KTM_890SMT
890SMTの国際試乗会では山岳路を封鎖して、速度制限なしで走るヒルクライムイベントも開催された。

正直、僕は公道で飛ばすのは得意な方じゃないのだが、それでもなんとか付いていけてしまうのだから驚いてしまう。この異常な速度の試乗ペースに慣れてくると、それがサスペンションの動きの良さの恩恵だということがわかってくる。コーナー入り口でフルブレーキングしても、脱出でフル加速してもストロークを使い切ることもなければ、その予兆すら感じさせないから安心して攻め込めるのだ。それにタイヤがどれだけ路面を捉えているかが非常によくわかるから安心感も高い。

 ストロークが大きいからこそ、反力が急激に強まるようなこともなければ、ちょっとライディングをミスったところでタイヤが急にグリップを失うこともない。KTMはワインディング最強のコーナリングマシンを作り上げたのだ。

KTM_890SMT