夫婦で住宅ローンのペアローンを組んで夫の実家を建て替え、そこで妻は夫、義父母と同居していたところ、夫が亡くなり妻は残ったローンについて返済を続け、くわえて折り合いの悪い姑と同居を続ける羽目になったというSNS上での投稿が話題を呼んでいる。これに対し「ペアローン地獄」「ペアローンはやめとけ」などとさまざまな反応が寄せられている。ペアローンを組むのは避けたほうがよいのか、もしくは、メリットは大きいのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 日銀によるマイナス金利解除を受け、住宅ローンの動向が注目されるなか、長期金利の水準などを参考に決められる固定金利型では早くも金利引き上げの動きが出ている。4月の大手銀行の固定型ローンの金利(10年型)は0.9~1.0%台ほどとなっている。一方、金融機関が企業向けに貸し出す際の基準金利である短期プライムレートを参考に決められる変動金利型では目立った動きはみられず、大手銀行の金利は0.3〜0.4%台ほどとなっている。

 もっとも、変動型の金利も引き上げに向けた動きがみられる。ネット銀行で住宅ローン残高1位の住信SBIネット銀行は、5月1日から短期プライムレートを0.1%引き上げることを発表。これがすぐ変動型金利の引き上げにつながるわけではないが、同様の動きが広まれば金利引き上げの土壌が醸成されていくことになる。

 一方、住宅価格は高騰している。不動産経済研究所の調査によれば、2023年の新築マンションの平均価格は、東京23区が前年比39.4%上昇の1億1483万円となり、初めて1億円を突破。首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の平均価格は28.8%上昇の8101万円。首都圏で住宅を取得するには高額の住宅ローンを組む覚悟が必要となる。

ペアローンのメリット

 そうしたなか、住宅ローンを組む際にペアローンを選択肢の一つとして検討する人も少なくない。一般的な住宅ローンでは、夫もしくは妻が単独で借り入れをするか、妻を「収入合算者(連帯保証人)」に設定(夫が借入人、「連帯保証型」の場合)することになる(収入合算タイプ)。ペアローンとは、夫婦それぞれが債務者となってローンを組むもので、物件の持分は夫婦で按分するかたちになる。ローンの本数は2本になり、夫婦がそれぞれ同じ金融機関の異なるタイプのローンを選択できるため、借入金額、返済期間、固定型か変動型かを同じにする必要はなく、それぞれが年齢や収入に応じて選ぶことができる。

 メリットは大きくは2つある。ひとつは、前述のとおりローンの本数が2本になるため、より高額の借り入れが可能になるという点。収入合算タイプの場合、一般的に収入合算者の収入について合算できる金額に上限が設定されており、全額を合算できない。一方、ペアローンは全額を合算することが可能であり、夫と妻ともに比較的高い収入がある場合は、夫が単独で借り入れをするのと比較して2倍ほど多く借り入れることも可能となってくる。

 もうひとつは世帯全体でみると住宅ローン控除の金額が大きくなるという点だ。夫単独での借り入れ、または収入合算タイプでは住宅ローン控除は夫のみが対象となるが、ペアローンは夫と妻それぞれが住宅ローン控除の対象となるため、結果的に節税効果が高くなる。