先日、デンマークの政治学者ビョルン・ロンボルクが来日し、東京大学、経団連、キャノングローバル戦略研究所、日本エネルギー経済研究所、国際協力機構等においてプレゼンテーションを行った。
ロンボルクはシンクタンク「コペンハーゲン・コンセンサス」の所長として、数百人の世界トップクラスの経済学者や7人のノーベル賞受賞者とともに、疾病や飢餓から気候変動や教育に至るまで、世界レベルの課題に対する「最も効果的な解決策」についてニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ガーディアン、CNN、FOX、BBC等で活発に発信を行っている。
彼の議論のポイントは以下のとおりである。
地球温暖化は確かに生じており、その原因は人間起源の温室効果ガスである。 他方、グテーレス国連事務総長やメディアの論調にみられるように温暖化のリスクは誇張されている。例えば山火事の増加が喧伝されているが、1900年以降、山火事に見舞われた地表面積のシェアは大きく低下しており、温暖化対策を講じなくても低下傾向は続く。洪水、旱魃、台風、山火事等、気候に起因する死者数は1920年の約50万人から2020年には約1万人に激減している。 地球温暖化は確かに問題ではあるが、世界の終末をもたらすものではない。世界は経済発展によって良い方向に向かっており、気候変動はそれを少しだけ遅らせるにすぎない。例えば飢餓による死者は1990年には700万人いたが、2020年現在、約250万人程度に低下している。世界の経済発展により2050年には更に約50万人に低下すると見込まれている。温暖化によりその数が増加するとしても、温暖化が生じない場合との差はわずかであり、現状よりも大幅に改善していることは変わらない。 IPCCの共有社会経路(SSP)の中間シナリオでは一人当たりGDPは2050年までに4.5倍になると見込まれている。温暖化のコストにより、それが4.3倍になるとしても現状からの大幅な改善である。