■19世紀の手術:麻酔と消毒薬の発見
1840年代までの外科手術は、「悪い部分をとにかく切断する」のが主流であった。馬車に轢かれた患者は屈強な男たちに押さえつけられ、無理やり足をナイフで切断された。切断後は、傷口に焼きゴテを当てて出血を止め、患者は痛みで失神した。手術後は運が悪ければ細菌感染や出血多量で死亡、運が良ければ自分の免疫で感染症を乗り越えた。
そしてその時代の優れた外科医の条件は、いかに早く身体を切り開くか、また患者が痛みのせいで叫んでもそれを無視する鋼の精神を持ち合わせているか、であったという。そのため「手術を受ける」のは拷問を受けるのと同じであり、手術を受けるのが嫌で自殺した患者も少なくなかったらしい。
また、この時代には手洗いの習慣がなかった。病院で多くの患者が死亡し、外科医は死体解剖の終わった手で、そのまま別の患者の手術を行っていたのである。当時の医者は手術後に傷口が化膿するのは当たり前で、むしろ化膿した方が早く治るとも考えていたという。
また、たとえ病気にならなくても日常に危険は満ちていた。お産の時には細菌感染である産褥熱(さんじょくねつ)によって、10人に1人の妊婦が死んだという記録が残されている。特に病院でお産をすると死ぬ妊婦が多く(それは医者や看護婦の手を介しての細菌感染だったのだが)、家で産婆の手による自宅出産の方が死亡率は低く、安全といわれていたという。
外科手術にはそんな拷問と等しい期間が長い間続いた。しかしついに1846年、ロバート・リストンがエーテル使用の無痛手術による足切断に初めて成功。それに続き1年後に、ジェームス・シンプソンがクロロホルムを発見し、「麻酔」という概念が初めて外科医に芽生えたのだ。
麻酔なしの外科手術を想像してみてほしい。切り開かれるお腹、串刺しにされる眼球、輪切りにされる脳、そしてナイフで切ら取られる足――繰り返すが、これらは全て麻酔なしに行われたのだ。外科手術の死亡率が80%であったことを考えると、いっそ手術をしない方が長生きできたのではないかと考えてしまう。しかしこの時代に手術を受けた患者がいたからこそ、今我々は外科手術や麻酔、そして消毒薬の恩恵を受けているのである。科学の進歩が、人の命を奪う兵器の開発などではなく、医学の発達など人間の生活をより良い方向に向けられることを願わずにはいられない。 (文=三橋ココ)
参考:「Daily Mail」、ほか
※当記事は2016年の記事を再編集して掲載しています。
文=うえまつそう
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提供元・TOCANA
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