21世紀になり、医療技術の進歩は目覚ましいものがある。しかしそれでも、いざ自分が「手術」を受けるとなると入院、麻酔、痛みや出血などが気になり、憂鬱な気分になる人が大多数ではないだろうか。しかし、医療が発達していない昔は、治療に伴う痛みや出血は今とは比べ物にならなかったのだ。
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■170年前の“死亡率80%の”外科手術
医療専門の歴史家リチャード・バーネット氏によって出版された、『Crucial Interventions – An Illustrated Treatise on the Principles & Practices of Nineteenth-Century Surgery(重要処置 ― 19世紀の外科手法の原理と治療法の図解付き論文)』は、非常に珍しい17~19世紀の外科手術の教科書である。
この本を見ると当時の医者は手術中、麻酔なしで患者の身体を切り開き、骨を砕き、脚を切断していたことがわかる。19世紀のロンドンの病院では手術を受けた患者の大多数は術後ショック、出血多量、感染症により死亡し、その死亡率は80%にも上ったという。
わずか170年前までの外科手術は、暗黒の時代だったのだ。手術には耐え難い痛みが伴い、傷は化膿する。虫垂炎でもほとんどの患者が死亡したらしい。
19世紀後半、外科手術は初めてカラーで図解され1冊の教本となった。このことによって手術は格段と進歩を遂げたといわれる。また1865年、ジョセフ・リスターが消毒剤を発見し、外科医はより複雑な手術の実施が可能になった。