昨年10月期の連続テレビドラマ『セクシー田中さん』(日本テレビ系)で、原作者の意向に反し何度もプロットや脚本が改変されていたとされる問題。その日本テレビで、過去のドラマでも同様のトラブルが起きていたようだ。22年に放送された『霊媒探偵・城塚翡翠』で、原作の改変に原作者が難色を示し、途中で原作者自ら脚本を執筆することになったといわれている。当時、原作者である相沢沙呼氏はX(旧Twitter)上に<四話、脚本をまるっと書かせて頂きました>(同年11月6日)とポストしていたが、相沢氏は今回の『セクシー田中さん』の問題を受けX上で次のようにポストしている。

<約束通りにしてもらうこと、原作を護るためにしたこと、そうした諸々の奮闘が『揉めてる』『口出し』『我が儘』みたいに悪く表現されたときが凄く哀しかったし、契約の縛りで実際になにがあったのかを言えないのは本当にしんどくて、自分が悪者になったような気持ちに陥ったのを思い出しました>(1月30日)

 こうした問題は日テレだけのものなのか。また、ドラマ制作現場では原作と脚本の折り合いはどのようにつけられているのか――。

 連ドラ『セクシー田中さん』の制作にあたっては原作者の芦原妃名子さんは、ドラマ化を承諾する条件として日テレ側に、必ず漫画に忠実にするという点や、ドラマの終盤の「あらすじ」やセリフは原作者が用意したものを原則変更しないで取り込むという点を提示し、両者の合意の上でその旨を取り決めていた。芦原さんが1月にブログなどに投稿した文章によれば、何度も大幅に改変されたプロットや脚本が制作サイドから提出され、終盤の9〜10話も改変されていたため芦原さん自身が脚本を執筆したという。芦原さんは29日、栃木県内で死亡しているのが発見された。

 この問題は、数多くの原作モノの作品を制作する映画界も重く受け止めている。30日に行われた日本映画製作者連盟(映連)の新年記者発表会で、松竹の高橋敏弘社長は「原作の素晴らしさを生かすことが大前提。今後もそのようなことがないように我々も気をつけることが原則」と発言。東宝の松岡宏泰社長は「原作者の意向を尊重して、いかに映像化するか。その考え方がぶれることはない」と語った。

「原作者の意向が最優先される」という大前提

 日テレ関係者はいう。

「一般的に原作サイドとテレビ局の間で取り交わす契約書では『原作者の許可なく改変してはいけない』というレベルの大枠までしか書かれておらず、具体的にどれくらいのどういう変更なら許容されるのかといった細かい内容までは書かれない。そこまで細かな内容をあらかじめ契約書に盛り込むのは現実問題として難しく、今回の『セクシー田中さん』では芦原さんが要求していた『原作に忠実に』のレベルの厳しさが、小学館と日本テレビを通じて脚本家にきちんと伝わっていなかったとみられる。原作者がどこまで原作に忠実であることを求めるのかは、その原作者によってまちまち。ドラマ制作の現場では、その都度、プロデューサーなりが原作者と脚本家の間の言い分を調整し折り合いをつけながら進めていくものなので、今回も制作サイドとしては『進めていくなかで調整していく』という意識だったと考えられる。

 現在ではウチの局に限らず『原作者の意向が最優先される』という大前提がドラマ制作にはある。ただ、局の制作スタッフや脚本家としては『原作者がそこまで細かく要求してくるのは、いかがなものなのか』と抵抗を感じる場面が出てくるのも事実で、それゆえに最悪、脚本家の降板などが起きる。『原作に忠実』というのは大事だが、連ドラは1話1時間で全10話ほどという制約があり、各話のラストでは翌週の回まで視聴者を引っ張るように工夫し、さらにいえば『ドラマとして面白いもの』に仕上げなければならず、完璧に原作に忠実にすることは不可能。当然ながら脚色や原作にない内容の挿入などが発生する。それを原作者側が『仕方がないこと』『ドラマとしての演出』と理解してくれるがどうかは、その原作者次第になってくる」