相手と会話せず一緒に歩くだけで仲良くなれるかもしれません。

中国の香港大学(HKU)のミャオ・チェン氏らの研究チームは、歩行中の会話の有無が歩行パターンの同期と印象形成にどう影響するかを検討しました。

実験の結果、会話がなくとも一緒に歩いた人に対して好印象を抱くことが確認されたのです。

つまり言葉によるコミュニケーションがなくても、横に並んで歩くだけで、面識のない2人の社会的な関係性が良好なものに変化する可能性があるということです。

また相手に対する第一印象が良いほど、歩行ペースが同期する割合が高いこともわかりました。

これについては一緒に歩いている人との歩行速度や腕の振りの大きさがどの程度同期しているかで、相手からの自分に対する好感度の高さを推測できるかもしれません。

相手の印象が良いと行動が同期しやすい

行動の同期は相手の印象を良くし、相手の印象が良いと行動が同期しやすい
行動の同期は相手の印象を良くし、相手の印象が良いと行動が同期しやすい / Credit: Unsplash

並んで歩く、大勢で集まっている場で拍手をする、会話をするなど。

他者と同じ行動を取ると、その動きやペース、強度が意識的あるいは無意識的に同期することがあります。

読者の皆さんもこのような経験があるのではないでしょうか。

会話しているうちに瞬きや喋り始めるタイミング、ニュアンスを伝えるためのジェスチャーの大きさなど同期する要素は数多く存在します。

同期のしやすさは、相手との関係性や特性でも変わります。

たとえば魅力度や好感度を高く、几帳面で、外向的な人物の行動は周りに影響を与え、同調行動を引き起しやすいことが分かっています。

同期行動は、他者と同じ行動を共有することで、危険性を回避したり、集団やコミュニティの結束力を強化することにつながります。

たとえば、始めて訪れた場所であっても、周りの人の言動をただまねるだけで、危険が伴う行動を正確に認識していなくても避けることができます。

また逆に意識的に行動を同期させることで、相手に対し好印象を抱くようになることも報告されています。

これらの事実は、社会的な関係性が行動の同期を促進し、また行動の同期が人間関係において重要な役割を担っていることを示唆しているともいえるでしょう。

しかし今までの対人関係での同期行動に関する研究では、会話や歩行それぞれの同期の有無のみを実験的に操作するものがほとんどで、歩きながら会話をするようなより現実に近い場面での検証は行われてきませんでした。

そこで中国の香港大学のミャオ・チェン氏らの研究チームは、歩行中の会話の有無が歩行パターンの同期と印象形成にどう影響するのかを検討しています。