Botlhale AIの可能性と課題・懸念

Botlhale AIが注目される理由は、技術の進歩に貢献するスタートアップとしての表彰歴があるだけでなく、デジタル上でサービスを展開する多くの企業が関心を抱く「顧客体験の向上」「顧客の獲得」などの領域をターゲットにするという現実的な戦略を立てているためだろう。

2023年4月に公開されたNewzroom AfrikaのYouTube動画で、Botlhale AIのCEO兼共同創業者であるThapelo Nthite氏は営業戦略を聞かれた際に「当社のテクノロジー最大の原動力はカスタマーケアだ」と答え、ターゲットとなる顧客層を明らかにした。

実際に、公式ホームページのUse Casesには各サービスごとの想定顧客が公開されており、たとえばVeraは「営業」「マーケティング」「カスタマーサポート」などでの使用を想定している。

一方で、課題もあると筆者は考える。ChatGPTや新たに追加されたカスタマイズ機能「GPTs」が騒がれているなかで、すでに多くの人間がOpenAI社や他社の提供するAPIの情報を無料で入手し、さまざまなアプリケーションを開発している。

筆者も(あくまで自分の趣味に毛が生えたレベルではあるが)、OpenAI社の「Whisper API(音声認識モデル“Whisper”のAPI)」を使用して趣味用の自動化プログラムを書いて楽しんでいる。試しにBolthale AIのAPIの情報を入手しようと調べたところ、簡単にアクセスはできないようだ。

一例までに、Googleのサーチエンジンにて「bolthale ai, api info」と検索すると同社のページが表示されるように見えるが、こららのリンクに行こうとすると404エラーとなり、詳細情報は入手できなかった。

図1. Bolthale AIのAPIの情報をGoogleで調べた結果。

図2. Bolthale AIのAPIの検索結果を表示させようとしたところ404エラーとなってしまう。

もちろん、クローズド戦略を取るのは立派な戦略なのでそれらを否定をするつもりは全くない。一方でLLMベースの生成AIが大きな盛り上がりを見せているなか、場合によっては重なる領域と見られかねないBolthale AIから、LLMや生成系AIへの対応のコメントやリリースなどのコメントが見つからないのはやや違和感を覚える。

また、オープンソース系のLLMや生成系AI環境も多数出てきているなかで同社はそれらを上手く使っていくのか、それとも競合関係になりえるのかが、はっきりしていないように見える。

LLM、生成AI、チャット、テキスト、音声認識は言うまでもなく注目度の高い領域であり、アメリカのマグニフィセント・セブン(AppeleやAmazonを含む大手テック企業7社)をはじめとする大手が、リストラをしながらでも生成系AIの人材を獲得しようとしている現在において、同社がどのようなポジショニングを取り成長につなげていくのかは投資家やユーザーを含む多くの人が気になる部分ではないだろうか。

たとえばBolthale AIは独自にLLMの開発はしておらず、むしろ強みはすでにアフリカの顧客の多数のデータやデータを使用したLLMのトレーニングと使いこなしであるような場合は、この強みを利用して大手と提携していくといった、さまざまな打ち手が考えられるのではないだろうか。

いずれにしても今後のBolthale AIの動向から目が離せない。

文・Gocha
アメリカ在住、エンジニア兼コンサルタント。アメリカ生活に関わることやその他記事に対する所感などをブログ・YouTubeで公開中。