「信長の野望」や「三國志」で知られるゲーム会社、コーエーテクモゲームスを傘下に持つコーエーテクモホールディングス(HD)は15日、2024年3月期連結業績予想の修正を発表。営業利益を下方修正した一方、経常利益・純利益を上方修正し、SNS上では一部ゲームファンの間で「本業のゲームの不振を得意の資産運用で穴埋め」「襟川恵子会長、相変わらず投資がお上手」「襟川会長が有能すぎる」などと話題を呼んでいる。果たしてコーエーテクモとはどのような会社なのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

 コーエーテクモは昨年から今年にかけ、「三國志」「信長の野望」「Winning Post」「アトリエ」シリーズの新作のほか、「Rise of the Ronin」「Wo Long: Fallen Dynasty」「Fate/Samurai Remnant」などのタイトルを精力的に投入。今回の売上高・営業利益予想の下方修正の理由について「当期に発売及び配信開始したタイトルのうち、計画を下回るものがあった」としており、これらの新作タイトルのセールスが思うように伸びなかったとみられる。その一方、「金融市場を注視しながら運用を行い、営業外収支が計画を大幅に上回って推移」(同社プレスリリースより)したため経常利益・純利益の予想を上方修正。本業であるゲーム事業以外の資産運用・投資の成績が良かったため最終的な純利益は当初予想を上回る見通しとなっている。この発表を受けSNS上では一部ゲームファンから以下のような声が相次いでいる。

<襟川恵子会長、本業のゲームの不振を得意の資産運用で穴埋め>

<コーエーテクモの本業は投資やからな ゲーム事業は趣味>

<コーエーはその誕生から成長、そして今日に至るまで、女傑襟川恵子会長の剛腕に支えられている>

<天才、襟川恵子は健在か>

<また投資で巻き返してら。流石の女帝>

 どういう意味なのか。

ROE22%を誇る優良企業

 コーエーテクモHDは、現社長の襟川陽一氏が家業を継ぐかたちで1978年に栃木県足利市で創業した染料工業薬品問屋・光栄(のちのコーエー)を前身とする。襟川氏は当時登場したマイコンに目をつけ、妻で現会長の襟川恵子氏が投資で貯めた資金でマイコンを購入し、80年代は主に業務ソフトなどの開発を行っていた。その後、襟川氏がマイコンで制作したゲーム『川中島の合戦』(81年)の大ヒットを契機として、同社はゲーム会社に転換。83年に発売した『信長の野望』と85年発売の『三國志』のヒット、88年の『信長の野望』の任天堂ファミリーコンピュータ(ファミコン)版の発売を経て同社は大きく成長し、日本を代表するゲーム開発会社の一社となる。

 同社の強みは歴史シミュレーションゲームだけではない。84年には会社経営シミュレーションゲーム「トップマネジメント」を発売しヒット。94年には襟川恵子氏が手掛けた世界初の女性向け恋愛シミュレーションゲーム「アンジェリーク」を発売し、乙女ゲームというジャンルを切り開いた。

 2009年にはテクモと経営統合しコーエーテクモHDが発足。現在は米国、ヨーロッパ、中国、シンガポールなど海外に子会社を持ち、主力のゲーム事業のほかにスロット・パチンコ事業、アミューズメント施設運営事業、賃貸用不動産の運用・管理事業、ベンチャーキャピタル事業も展開。売上高784億円、営業利益391億円、ROE(自己資本利益率)22%(23年3月期)を誇る優良企業として知られる。