トップ通過からの難しさ

予選は2人のドライバーの合算タイムで決まる。Q1はA組14台、B組13台でアタックをし、山内はA組で走行した。コースインから4周目にアタックをし、1分25秒862でトップに立った。続くB組は#2muta Racing GR86 GTのブリヂストンユーザーがトップで1分25秒985。各組上位8台がQ2のグループ1になる。9位以下はQ2のグループ2になり、17位以下のポジション争いに変わる。

スーパーGT2024 第1戦岡山 SUBARU BRZ GT300 多くの課題を克服して臨みつつも26位フィニッシュ
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

そしてQ2グループ1では井口がポールポジションを目指して走る。ただし使うタイヤ山内がQ1で使ったタイヤを使う必要がある。これが今季の新ルールだ。必然的にユーズドでのアタックとなるためラップタイムが向上することは難しい。井口は10分間の予選で3回のアタックを試みたものの、山内のタイムを伸ばすことはできず1分26秒651で予選3位が決定した。

脅威なのはブリヂストンを履く2台だ。ポールポジションは#65LEON PYRAMID AMGで、このチームはQ2で0.166秒タイムを伸ばしているのだ。前述のようにピークグリップはニュータイヤで走るQ1で使い切り、Q2ではピークの過ぎたタイヤで走行しなければならず、タイムアップは望めないという固定概念があるが、見事に概念を変えてきたのだ。ピークの範囲が広大ということなのか?

Q2でタイムアップをしたチームはトップ10を見る限り#65だけなのだが、2位を獲得した#2のタイムを見るとQ1とQ2のタイム差は0.295秒差とわずか。ここでピーク領域の広さを感じてしまう。一方、BRZ GT300は0.789秒差がある。この少しの差は、予選順位に大きな意味を持っているわけだ。

スーパーGT2024 第1戦岡山 SUBARU BRZ GT300 多くの課題を克服して臨みつつも26位フィニッシュ
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

小澤総監督によると、Q1とQ2では路面の状況が変わる中でマシンのセットアップも変更する必要があり、その煮詰める部分で少しできていないところがある、と話す。井口自身も気合が入り過ぎて、行き過ぎたアタックになってしまったという反省も口にしたが、0秒以下の争いでは気持ちが結果に左右していることもあるのだと、改めてヒューマンスポーツの一面を垣間見る。

一方で同じダンロップを履く#96K-tunes RC F GT3の新田守男/高木真一のベテランチームはQ1とQ2がほぼ揃っており、わずか0.07秒差というアタックを見せている。

予選結果はポールポジションが#65LEON PYRAMID AMG蒲生 尚弥/篠原 拓朗(BS)、2位#2muta Racing GR86 GT堤 優威/平良 響(BS)、3位にBRZ BGT300(D)、4位#96K-tunes RC F GT3新田守男/高木真一(D)、5位#7Studie BMW M4荒 聖治/ニクラス・クルッテン(M)、6位グッドスマイル 初音ミクAMG谷口 信輝/片岡 龍也(Y)となった。

スーパーGT2024 第1戦岡山 SUBARU BRZ GT300 多くの課題を克服して臨みつつも26位フィニッシュ
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

鬼気迫る追い上げも・・・

スーパーGT2024 第1戦岡山 SUBARU BRZ GT300 多くの課題を克服して臨みつつも26位フィニッシュ
スタート前は適度の緊張と展開に対する期待に溢れている(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

予選3位からのスタートは井口がステアリングを握る。タイヤは予選で使ったタイヤを使うルール。ポールの#65はQ1で5ラップ、Q2で3ラップの合計8ラップ使用済み。ここで発覚したのはQ2のアタックはインアウト含め3ラップしかしていないという事実だ。畏敬の念を持つしかない。

#2は9ラップ、#61は10ラップ、#96は9ラップ走行し、BRZ GT300はアタックを4回している。こうしたタイヤの使い方の違いが何か影響するのか?戦略的にはデリケートであり、ドライバーにもセンシティブだ。

300km/82周のレース。タイヤ交換義務やピット回数義務などはなく、どんな戦略で戦うのか。序盤、予想通り、ブリヂストン勢は速い。前の2台#65と#2について行きながら、後半勝負というBRZ GT300の作戦。一方のブリヂストンはタイヤ無交換作戦ができるのか? レース前、大方の予想では「予選を使ったタイヤでは無理でしょう」という予想屋が多い。

井口は16周目までは1、2秒離されたものの、食らいついており、後続は引き離している状況を作った。だが、17周目あたりから井口のラップタイムが落ち始める。おおむね1分28秒前半で追いかけていたのが、2ラップで0.5秒ずつ落ちていく。29秒台になり、19周目には1分30秒台にまで落ちる。前の2台は未だ28秒台で走り続けている。

スーパーGT2024 第1戦岡山 SUBARU BRZ GT300 多くの課題を克服して臨みつつも26位フィニッシュ
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

タイヤの摩耗が限界に近づいている。しかし、ドライバー交代のミニマム周回数までには10ラップほど足りない。井口はタレたタイヤで粘るしかない。コーナーごとにマシンの姿勢が乱れている。マシンを降りた井口は「飛び出さないようにするのが精一杯でした」とのちにコメントする。

29ラップを終え山内に交代。この時井口は後続2台に抜かれるものの5番手でピットに戻った。山内はニュータイヤ4本に履き替え給油してピットアウト。ピットストップ中に多くのマシンに抜かれコースに戻れば19番手。ただ、このあと多くのマシンがピットに入るため、正確な順位は不明だ。

そして各車がピットを終えると12番手だ。厳しいことになっている。ピットでのタイヤ交換作業を見ると#2、#52、#31のブリヂストン勢は無交換でピットアウトしている。#65は交換作業をしているが2本だけの様子だった。この無交換作戦には多くの予想屋が驚き、尋常じゃない!と自身を宥めすかしていたに違いない。ブリヂストンの驚異的なグリップを失わない耐摩耗性が突きつけられたのだ。

山内は目の前の一台を交わすことに集中する。#88JLOC Lamborghini GT3小暮 卓史/元嶋 佑弥には手こずった。山内は「ランボはブレーキが止まる(よく効く)んですよ。僕もブレーキは得意なんですけど同じように(コーナーに)入るから抜くまでに行かなかったです」と話すが、2度並走状況に持ち込み、綺麗に交わして次のターゲットへ突き進んだ。

そうなると、山内は10位以内のポイント獲得を目指すことになるが、各マシンはフレッシュタイヤで燃料も似たような状況だけに、追い抜くことは至難の業になる。しばらくトレイン状態を余儀なくされるが、トレインの先頭が見えた時は猛然と抜きにかかる。

鬼気迫る山内の追い上げ。テールツーノーズは隙間風すら通さぬ接近戦。マシンは揺れノーズはテールを舐める。#5マッハ号はスピンアウトした。

山内は8位に浮上。だが、ドライブスルーペナルティを課せられ、ここまでの追撃に終止符を打った。山内はチーム無線で呼び戻されペナルティを消化。ところがエンジンルームから煙が立ち昇っている。その翌周、ピットに入りレースは終了した。残り10周という場面でのサドンデスだった。

スーパーGT2024 第1戦岡山 SUBARU BRZ GT300 多くの課題を克服して臨みつつも26位フィニッシュ
エンジンルームから煙が。。。このままレースを終えた(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

マシンは接触の影響でターボのオイルデリバリーホースが緩んだためということだった。また山内は「ブレーキが抜けたんですよね、言い訳はしたくないけど」とコメントし「大変申し訳ないことをした」と反省しきりだった。また、レースを振り返る中で山内は「バトルになっている状況でもタイヤを優しくつかわないとダメというのが分かりましたし、40ラップくらいはいいペースで走れたので、これまでよりはいいタイヤになってました」と明るい材料もあったことを語っていた。

こうして26位完走というリザルトになるが、多くの手応えを持って挑んだ開幕戦では、まだ課題が残されていることも見えたレースだったとも言える。次戦は約2週間後の富士スピードウェイ3時間レースだ。チャンピオン奪還となるのか。シーズンは始まったばかりだ。

提供・AUTO PROVE

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