イランの核兵器製造を最も恐れているのはイスラエルだ。2002年、イランの秘密核開発計画が暴露されて以来、イスラエルは核関連施設へのサイバー攻撃を実施する一方、核開発計画に関与する核物理学者を暗殺してきた。

例えば、2010年、「スタックスネット」と呼ばれる、米国とイスラエルが共同開発したコンピュータウイルスが、イランのナタンズのウラン濃縮施設を攻撃した。同サイバー攻撃でイランのウラン濃縮活動は数年間遅れたといわれた。また、2012年にはイランの核科学者、モスタファ・アフマディ=ロシャン氏が、テヘランで車に取り付けられた爆弾で殺害された。また、イラン核計画の中心的人物、核物理学者モフセン・ファクリザデ氏が同じように暗殺された。イラン当局はイスラエル側の仕業と受け取っている(「『イラン核物理学者暗殺事件』の背景」2020年11月29日参考)。

イスラエルのイラン核関連施設への攻撃を恐れ、イランはナタンツのウラン濃縮関連施設を地下深い場所に移動し、今日まで活動を継続している。イランの核開発計画を外交交渉で解決する道はもはや難しくなってきている。このままいくとイランは近い将来、核兵器を製造し、世界で10番目の核兵器保有国に入るのは時間の問題だ。

イランが核兵器を所持すれば、イランが軍事支援するパレスチナ自治区ガザのイスラム過激テロ組織「ハマス」、レバノンのイスラム根本主義組織「ヒズボラ」、イエメンの反体制派民兵組織フーシ派などに核拡散する危険が高まる。イスラエルは国の安全を脅かすイランの核兵器の開発を阻止しなければならないわけだ(イスラエルは2007年9月、シリア北東部の核関連施設(ダイール・アルゾル施設)を爆破した)。

ちなみに、米空軍は2021年7月23日、新しい「バンカーバスター」のGBU-72Advanced5KPenetratorのテストを実施し、成功した。同バンカー・バスターは5000ポンド(約2.27トン)の爆弾でイランの地下核施設を破壊する威力を有している。GBU-72は戦闘機または重爆撃機によって運ばれるように設計されている。

イスラエルは2009年、米国から小型のバンカーバスター爆弾GBU-28を密かに購入したが、山の奥深くに埋もれているイランのフォルドウ核施設を貫通する能力はないと受け取られてきた。そこでイスラエル側は米国から「バンカーバスター(GBU-72)」を購入したのではないか(「イスラエルのイラン核施設爆破計画」2021年10月23日参考)。