ジョンソン下院議長は、今週中にイスラエル支援の法案可決を目指すと発言している。しかしながら、イスラエル支援とはどの法案かを未だ明らかにしていない。
投票が予定された法案は公表されているが、ラインナップをみると、イランへの制裁がメイン(イランから石油製品を購入する中国の金融機関への制裁、外国直接製品ルールをイランに適用するなど)となっている。しかも規則停止下で行うことになるため3分の2の票が必要になる注2)。
すでにリリースがあったように注3)、東部標準時間15日(月)17:30から下院共和党内の会議が実施されるので、そこでイスラエル支援の予算を含めた具体的な協議が実施されることになるはずだ。しかし、共和党内で見解が一致するとは限らないし、下院で可決しても上院で行き詰まる可能性がある。
というのも、 143億ドルのイスラエル支援の法案は2023年11月に既に下院は可決している注4)。
この法案は、内国歳入庁(IRS)の予算削減がセットになっているため上院が無視している。上院では進まなかったために2024年2月には、IRSの予算削減を取り除き、143億ドルのイスラエルへの単独支援法案を進めようとした。
しかし、今度は財政赤字を増やしてまで海外支援をすることに反対する共和党からの賛成票が足らず、民主党からも票が入らずに可決できなかった。そうして行き詰まった状態のままなのである。
当然、民主党は2か月前に上院で可決された$1180億のウクライナ・イスラエル・インド太平洋支援への軍事支援などを進めたいと考えている。ウクライナ支援を進めたい共和党議員も、少なくとも3分の1はいる。
なので、ジョンソン下院議長が上院で可決した法案を審議にあげさえすれば可決するだろう(規則停止は必要で3分の2の賛成が必要になる可能性もあるが)。
あとはジョンソン下院議長次第なのだ。
それにしても、ジョンソン下院議長も現在はかなり苦しい立場に立たされている。それは共和党のグリーン下院議員がジョンソン下院議長に対して3月下旬に下院議長の解任動議を提出しているからだ。あとは議場で解任投票を要求すれば、数営業日以内に投票することになる。
ウクライナ支援を含めたイスラエル支援法案を投票にかけたら、グリーン議員に解任投票を求められる可能性が残っている。トランプ氏はジョンソン下院議長を支持したものの、グリーン議員が間違っているとまでは言及していない注5)。
民主党は解任賛成に投票することと引き換えにウクライナ支援を進めようとする議員もいる。しかしながら、現在の議席差はたった数議席だ。共和党下院議員からたった数名の賛成票でジョンソン下院議長は解任されることになる。そうなると、また下院議長を決めないと何も投票できない事態に陥る。
しかも、ギャラガー下院議員が4/19(金)で引退するため、現在の共和党218議席が1議席減ることになる。さらに共和党にとって試練となるのは、4/30(火)にはNY州の特別選挙で民主党が1議席追加となる。そうなると、共和党217議席/民主党214議席となり、さらに議席差が縮まることになる。
5/21(火)にはマッカーシー元下院議長の議席をうめる特別選挙が行われるので、そこで共和党が勝利すればまだ218議席に戻るだろうが、それでも数席の差が続くことになる。
そのため、共和党下院は団結できないと、民主党院内総務のジェフリーズ下院議長が誕生してもおかしくない状況になっている。
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なお、上院では別の動きとなる。
先週、下院が延期したマヨルカス国土安全保障省長官に対する弾劾訴追案を火曜日に上院に正式に提出する予定で進めている。 上院は早ければ水曜日にも裁判の棄却または表決を採決することになるだろう。
また、先週、下院で可決した外国情報監視法(FISA)第702条の2年間更新も上院で期限の4/19(金)までに承認しなければならない。
注1:Top four congressional leaders to address AIPAC leadership meeting 注2:Weekly Schedule 注3 注4:House approves GOP’s $14.3 billion Israel aid package 注5:Trump backs Johnson amid Greene ouster threat: ‘He’s doing a very good job’
編集部より:この記事は長谷川麗香氏のブログ「指数を動かす米議会」2024年4月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「指数を動かす米議会」をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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