怪しげな勧誘にマインドコントロールされないための方法

人の善意につけこんだ、カルト団体のマインドコントロールに騙されないためには、どうすればよいのか。日本脱カルト協会理事でオウム真理教などのカルト問題を扱ってきた滝本太郎弁護士によると、マインドコントロールするカルト団体(マルチ商法団体なども含む)は、以下の手法を利用して誘ってくるといい、注意を呼び掛ける。

(1)好意性の原理…好ましい人の言葉を人は聴く。まずは友人・信頼関係を確立してから始まる。

(2)段階の原理…いきなり「入会しませんか」とは言わない。ローボールテクニック。「1時間だけの学習会だよ」「途中でやめるのは自由だよ」などと誘う。

(3)賞賛手法…「素質があります」「貴方こそがこの世界を、先祖を救うかもしれない」などともてはやす。

(4)権威の原理…教授、医師、権威ある団体、著名人、公的な機関の裏付けがある、と匂わす。

(5)希少性の原理…人・モノ・時間の限定テクニック。「こんなチャンスはまずない」「あと3つだけ」「今、日本にいて、この真理に出会えたことが奇跡」「あと3年しか猶予はない」などと煽る。

(6)返報性の原理…真面目な人ほど“借り”があるままでいることは嫌なもの。役立つ知識をもらえた、お茶代・参加費を立て替えてもらった、もともと世話になった先輩が自分のために時間をつくってくれた、いった状況を利用する。

(7)原罪意識の原理…「人類はみんな生まれつき罪(原罪)がある」「今の日本に生きているだけで罪である」「あなたは、この面ではマジョリティだから差別者だ」などと、罪の意識を植え付ける。

(8)救済・変身願望の刺激…「あなたも支援者・救済する立場になれる」「人のために生きてこそ生きる価値がある」「身の回りや自分のことだけを考えて生きている暇はない」などと揺さぶる。

(9)優越感・達成感の原理…メンバーになることで得られる優越感をほのめかす。メンバーに対しても、上位の人は階級名や衣服、装飾品で差をつけることで上を目指すように仕向ける。「これはあなただけに伝えるけれど……」などと特別感を与える。参加回数を競わせる。

(10)同調性の原理…「朱に交われば赤くなる」の言葉通り、閉塞した社会に入ると、周りが正しいとしていることで「社会的証明」が得られるため、つい合わせてしまう。わずかに感じる“疑問”も封じ込めてしまう。

(11)勧誘者の原理…教義などにまだ確信が持てない内に、別の人を勧誘させる。これは、「他人を勧誘する以上、自分は確信していかなければならない」と感じる心理を利用している。

(12)陰謀論・単純化・思考の省略…「それは〇〇の陰謀なんだよ」「この情報を知らない人は損をしている」「それは差別だよ」「貴方も人も苦しむだけだから、反対側の意見の人と議論してはいけない」など、思考を方向付ける。

(13)一貫性の原理…真面目な人ほど、思想も行動も一貫させておきたいもの。「この考えであれば、この結論になるはず」「この現実が間違いなんだ」など、思想に合わないことは受け入れないようになっていく。

(14)秘密の共有…代表とメンバー、上位メンバー間だけで秘密を共有し、思想を固定化させる。

(15)ルビコン川の手法…違法行為をさせて縛り付ける方法。「もうこの方針で来てしまった」「それで食っている」「この矛盾は見なかったことにしよう」との思考に陥らせる。

(16)情報遮断…「こんな凄いことを誰かに言ってはいけない。たとえ親でも」「素敵なあなただから伝えた」「妨害する悪魔側の人もいる」「インターネットはここだけ見てね」「悪意ある言葉を知れば汚れます、ブロックしたほうがいい」「反対側で優しく言う人がいるから気をつけてね。まだ学習が足りない、しっかり学んでから考えましょうね」「方針転換した〇〇さんは、おかしいんだよ」などと語り、外部との情報を遮断しようとする。

(17)栄養不足、睡眠不足…教義にはまるまで、栄養や睡眠を十分にとらせない。ゆったり休み、ゆったりと栄養を取らなければ思考能力も思考意欲も失っていく。

(18)トランス状態や神秘体験の利用…大声で一定の言葉や身体の動きを続ける。漆黒の闇などに入れば、トランス状態に入り快感ともなる。

(19)恐怖の原理…「あなたも100%死にます。その後が問題」「ここまで知ったのに、今決めなくてどうするの」「先祖が苦しんでいる」「やめたらバチが当たる」「入らなかった人、やめた人はこんな事故に遭った、病気になった。あなたは入っていたからこの程度で済んだんだよ」「辞めたら裏切者だよ、この世界で生きていけないよ」などと恐怖心を煽る。

(20)単語・言葉の操作…オウム真理教が「殺人」を「ポア」と言い変えたこと、多くの団体で「救済」と称して違法行為をすることが知られているように、単語・言葉を言い変える、単語の定義を変える、またやたら難しい漢字や英語などを使って、深奥または新しい考えだとして、幻惑する。

これらに当てはまる項目が多ければ多いほど、「カルト性が強い団体」といえる。これに長井氏の体験談を当てはめると、「聖教新聞を数部とる」のは(9)の手法、「宇宙銀行」は(8)、「節目の年」は(19)になるのだろう。ただし、同じような手法を使う宗教団体は多々ある。

東京都にある麻布メンタルクリニックの臨床心理士・公認心理師の黒岩貴氏は、「人間には仏教やキリスト教の教えにも、『慈愛によって、貧しい人に手を差し伸べる』というものがあり、『お金を布施すると自己発達につながる』と解釈されます」と述べ、他者に施しの手を差し伸べることが悪いわけではないとして、お布施自体が悪いわけではないため、お布施を教える団体を一概に批判することができない現状の難しさを説く。

また、会社でも「上司だから」と部下に奢ってあげたり、「頑張って会社に貢献すれば出世できる」「今年は10周年だから、今が頑張り時」といった具合に従業員教育をすることはあるので、創価学会が信者に忠誠を求めるような教えを簡単には批判はできないだろう。

真面目で純粋な人ほど、自分が金銭的に損したり多くの時間を使ってでも、「善人である」というアイデンティティを求めるのかもしれない。

何をもって「幸せ」とするかは千差万別であり、通り一遍に宗教的価値観を否定することもできない。お布施の強制をすることは「カルト」だが、「自分だけのために生きて、自分だけのために金と時間を使う」という利己主義的な価値観を他人に押し付けることも「カルト」なのかもしれない。

(文=深月ユリア/ジャーナリスト)

提供元・Business Journal

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