近年、農業における人手不足が世界的に深刻である。国連食糧農業機関(FAO)の推定によると、農業従事者の人数は2000年から2021年にかけて約17%減少したという。

例えば米国の農業市場は100万人以上の外国人労働者に依存しているものの、COVID-19のパンデミックの前から、隣国のメキシコから来る外国人労働者の数が減少。すでに米国経済に年間数十億ドルの損失を産んでいるという。

農林水産省によると日本では農業従事者数が2015年には175.7万人だったが2022年には122.6万人に減少し、また平均年齢は67.1歳から68.4歳へ上昇しているとのこと。

一方で世界の人口は2019年の77億人から、2050年には97億人への人口増加が見込まれており(参考)、需要を満たすためには食料生産全体を60~70%も増やす必要があると言われている。

農業従事者数が減少の状況下で、食料生産の増加に向け農作業の効率化が求められる中、イスラエル発のスタートアップTevelは小型ドローン、AI、データ分析を組み合わせた自動果物収穫ロボット「FAR(Flying Autonomous Robots)」を開発した。

人よりも正確に果物を収穫するFAR

FARは長さ3フィートの爪とカメラとAI認識技術を搭載した“自律飛行ロボット”で、果物や葉を検出し、果物の種類、大きさ、熟度を識別し、自動で収穫できる。

Image Credit:Tevel

また収穫した果物すべてについて継続的にデータを収集し、収穫した果物の成熟度や重さなどのリアルタイムの収穫データを収集可能。さらにFARは軽量な一方で耐久性があり、50g(2 オンス)のリンゴから700g(25 オンス) のリンゴまで、幅広い果物の収穫に対応できるという。

Image Credit:Tevel

傷つけずに収穫できるだけではなく、果実の熟度を判断する際に人間よりも傷の発生率が低く、選果能力が20%優れている点もFARの魅力だろう。

Image Credit:Tevel

同ロボットの導入により、生産者は収穫のために臨時で人を雇うコストが不要となる。総コストを20~30%削減できると考えられている。

Edge Computing Worldのインタビューで、Tevelの創設者兼CEOのYaniv Maor氏はイスラエルの労働危機に関するテレビのドキュメンタリーを見たことがきっかけで、この事業アイデアを思いついたと語る。

番組では、果物を摘むようにと依頼された20人の若者全員が、半日後には帰ってしまったという。

果物の収穫作業は負担が大きいにもかかわらず、労働者には非常に低い賃金しか支払われないことが多い。また手作業による収穫は、不必要な傷による食品廃棄の主な原因の1つでもあり、時間効率が非常に悪い(参考)。

この問題に対する技術的な解決策を見つけたいという思いに駆られ、Yaniv Maor氏はTevelを立ち上げた。