アメリカからベトナムへ

ービンズオン入団以前は、アメリカの複数クラブでプレーされていました。当時を振り返ってみていかがですか?

サイラス:アメリカでプロ契約して5年ぐらい現地でプレーしましたけど、様々な国籍の選手がいる中でサッカーのスタイルも全然違いますし、人種が違えば交流の仕方も違うので色々と学ぶことが多かったです。そういう環境でしっかり自分を出せるように主張しないといけないなというのを感じる日々でした。

ーこれまでプレーした複数の国の中で、サッカーの違いを感じましたか?

サイラス:やっぱりアメリカは身体能力的の高い選手が多いですし、縦に速かったり高さがあったり、フィジカル的なところは違うなと感じました。ベトナムもすごく勢いがあって強度が高いシーンもありますし、国それぞれにスタイルがあるというのは感じています。

ーアメリカでは現在、久保裕也選手や山根視来選手(いずれも元日本代表)といった元Jリーガーがプレーしていますが、アメリカでの日本人選手の評価は?

サイラス:(アメリカは)フィジカル的要素がすごく求められるリーグでもありますから、そこで活躍するのはそれほど簡単ではないと思います。でも、日本人選手の質や適応能力の高さはアメリカはもちろん世界共通で評価されています。

ービンズオン入団までの経緯を教えてください。

サイラス:知り合いの選手がベトナムでプレーしていて、代理人を紹介してもらいました。僕自身、両親がベトナムにルーツがあったので、越僑枠という制度があるのを知って本格的に動き出したという感じです。

ーベトナムリーグ挑戦の最大の決め手となったのは?

サイラス:父がサイゴン(現ホーチミン市)生まれで何かの縁を感じましたし、今年30歳になるということでサッカー選手として違う場所でチャレンジしてみたいという思いから挑戦を決めました。

サイラス龍一・チャン 写真:Becamex Binh Duong F.C.

「越僑枠」制度がもたらす効果

ービンズオンではトライアルを経ての加入となりました。既に1か月以上チームで練習されていると思いますが、チームの印象は?

サイラス:すごく歴史があるクラブだというのは聞いていましたし、多くのタイトルを獲得してきたクラブなので、しっかりしたチーム・組織だという印象を持っています。

ー監督からはどんな役割を求められていますか?

サイラス:僕自身は攻撃的なポジションの選手でもあるので、攻撃でアクセントをつけてほしいというのは常々言われています。攻撃時の豊富なアイデアだったり、自分にしかできない部分をどんどん出してほしいとは言われていますね。

ー今回「越僑枠」での登録となったわけですが、この制度自体をご存じでしたか?また、この制度はVリーグに対しどのように貢献すると思いますか?

サイラス:(越僑枠制度は)知らなかったです。ベトナムに行ける可能性があるという段階になって情報を色々と調べている中で初めて知りました。国外で生まれ育った選手がベトナムでプレーする機会が増えればベトナム人選手にとっても刺激になりますし、サッカーのスタイルが今後良い方向に変わっていくきっかけになるんじゃないかと思っています。

ー越僑枠でVリーグクラブに加入した選手としては、GKフィリップ・グエン(元チェコ代表)が後にベトナム国籍を取得し、現在はベトナム代表でプレーしています。将来的にはベトナム国籍取得や代表でのプレーなども視野にいれていますか?

サイラス:国籍取得までのプロセスや手続きで、どれぐらいの時間が必要なのかそれ次第というところもありますが、プロサッカー選手である以上高いレベルでやりたい気持ちはあるので、チャンスがあれば代表の試合にも出場してみたいです。

ービンズオン省での生活は慣れましたか?いざ生活してみて、驚いたことなどはありましたか?

サイラス:もう慣れました。街としても発展しているので、ここでの暮らしは気に入っています。驚いたこととしてはやっぱり交通ですかね。日本以外のアジアに住むのは初めてですから、バイクの数には驚きました。


サイラス龍一・チャン(右)写真:Becamex Binh Duong F.C.