食物アレルギーへの関心は世界中で年々高まっている。米国の市場調査レポートプロバイダーFuture Market Insights社(FMI)によると、食物アレルギー関連の世界市場は2023年に398億3000万ドルと評価された。今後CAGR5.2%で成長し、2033年には661億5000万ドルに達すると予測されている。

FMIによると食物アレルギー有症率は成人で4%であるのに対し、5歳未満の幼児では8%。この傾向は日本でも同様で、厚生労働省によると全年齢で1~2%の食物アレルギー有症率が乳児に限定すると10%にまで到達するという。こうした数値からも、乳幼児の時点でのリスク早期発見が肝であり、またビジネスチャンスでもあることは明らかだろう。

食物アレルギー関連市場の拡大に伴って、業界に参入する新興企業も増加。その中の1社が、イスラエルのスタートアップ「MyOr」だ。乳幼児の食物アレルギー“治療”ではなく、アレルギーの発症そのものを未然に防ぐことを目指すサービスを展開する。

MyOr社の公式サイトトップ。アレルゲンを含む食品が画面に表示される。Image Credits:MyOr

乳幼児のアレルギー発生防止を目指すサービス「MyorCare」

MyOr社によると、アレルギー発症は皮膚から始まるという。体の保護膜である皮膚にアレルゲンが侵入すると、表皮常在菌のバランスが崩れ免疫システムが損なわれる。その結果、赤ちゃんは食物アレルギーを発症してしまうのだ。

現代の医療においては、アレルギー症状を治療・抑制することはできても、完治はできない。そこで、MyOrは独自のテクノロジーを用いて乳幼児のアレルギー発生を未然に防ぐソリューションにたどりついた。それが、同社の開発した「MyorCare」だ。

Image Credits:MyOr

MyorCareは、世界で初めて有効性が臨床的に認められた食物アレルギー予測アルゴリズム。先天的な皮膚機能不全を測定し、ユーザーが入力したデータと合わせて、AIアルゴリズムを用いてアレルギーリスクのある新生児を特定する。また、保護者に対しては食事療法士から正確で分かりやすい情報とガイドラインを提示し、皮膚バリア回復製品やアレルゲンを適切に把握した食品情報を提供する。これが、MyorCare独自の「プロテクションプラン」である。

利用法は簡単、安全性も国際基準

MyorCareの利用方法はいたって簡単で、公式サイトでは3ステップで紹介されている。

Image Credits:MyOr

まず保護者は、無料の簡単なアンケートにウェブで回答して子供の状況に関する情報を伝える。すると、同社のアルゴリズムがその乳幼児に食物アレルギー発症リスクがあるかどうか特定。リスクがあった場合、結果について相談の場を持てるようにユーザーと専門家を結び付ける。赤ちゃんそれぞれにカスタマイズされたリスクレポートが作成され、子供の健康維持や緩和対策に役立てることができるという仕組みだ。

MyorCareはFDAやTGA(オーストラリア保健省薬品・医薬品行政局)などの認証があるほか、GDPR(EU一般データ保護規則)にも準拠しているため、健康面でも情報セキュリティの面でも安全なサービスが受けられるようになっている。