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手頃でハイパワーなFRスポーツとしてのシルビア、最終章へ
5ナンバーへの回帰、そして走りと美しさの融合
手頃でハイパワーなFRスポーツとしてのシルビア、最終章へ
2リッターターボ級の国産小型FRスポーツとして今も根強い人気を誇る、日産 シルビア。
MOBY編輯部がAIに聞いた、「30~50代のクルマ好きが気になる名車」にもノミネートされており、実際この年代なら、S13発売当時にデートカーとして使った思い出から、FRスポーツがほぼ消え失せてからドリフト競技などで奮闘する記憶がが濃いはずです。
今回はその歴代シルビアから、いよいよ最後となった7代目、5ナンバーFRスポーツクーペとしてはひとつの理想形に達した名車、S15シルビアを紹介します。
5ナンバーへの回帰、そして走りと美しさの融合
1999年1月に7代目シルビア、S15型を発売した頃の日産は、消えかけたたいまつがいよいよその火を落とそうかという頃…というくらい自動車メーカーとして最悪の時期にありました。
1990年代に技術世界一を目指した「901運動」の成果で、1980年代末から1990年代初頭にデビューした名車の数々は結果的に市場でのシェア拡大に寄与せず、バブル崩壊後はコストダウンを余儀なくされたモデルチェンジや新型車は不評で、RVブームにも乗り遅れ。
K11マーチや初代E50エルグランドなど一部の「孝行息子」を除けば、スカイラインGT-Rのように強烈なイメージリーダーで何とか面目を保っていた有様で、1999年3月にフランスのルノー傘下入りが決まった時、金庫の中はもうスッカラカンとまで言われたほどです。
そんな時期に新型シルビアを開発しようというのですから、実質的には不評だった6代目S14のネガを潰し、中身はほぼそのままで作るしかなかったのですが、結果的にそれが正解でした。
6代目S14シルビアは、1993年の発売時点で既にデートカー需要が去っていたのは明らかで、「意のままの楽しい走りとセンスの良さを徹底追求したスタイリッシュスポーツクーペ」と発表されたクルマです。
ただし開発そのものはデートカーとして行われたのか、中途半端に軟派な雰囲気、不景気なのにケシカランと言われそうな、しかも大きく重くなった印象を持たれた3ナンバー車であり、ワイドトレッドでむしろ走りの質は上がったと言っても、評価されませんでした。
そのため姉妹車の180SXがS13型のまま継続販売されましたが、7代目S15とは要するにS14の寸法を5ナンバーに収まるようちょっと縮めて180SXと統合、ちょっとやる気のあるデザインに、他車種でも使っている6速MTを組んだだけのクルマです。
しかし途端に「原点回帰!」「俺達のシルビアが帰ってきた!」とばかりに大騒ぎでメディアも市場もS15を受け入れ、これからまた楽しいFRスポーツの時代が始まる…とばかり、明るい雰囲気に包まれました。
前年にはトヨタ アルテッツァ(初代レクサスIS)、数カ月後にはホンダ S2000と2リッター級FRスポーツのデビューが相次いでいた頃ですし、それら高性能自然吸気エンジンに対し、シルビアはターボエンジンというだけでインパクトがあったんですね。