電車やバスではたどり着けない場所まで送り届けてくれるタクシーは、公共交通機関のなかでもプライベート性の強い乗り物です。

一方で、日々さまざまな利用客と狭い空間を共にしているドライバーは、「対応に困る状況」に出くわすことも多いと考えられます。

今回はタクシードライバーの方々から、「対応に困る瞬間」についてのエピソードを聞きました。

目次
「触らずに起こす」その工夫と気遣いに脱帽
目的地を教えてくれ!

「触らずに起こす」その工夫と気遣いに脱帽

タクシードライバーが語った“勘弁してくれ”なヤバ客エピソード
(画像=©naka/stock.adobe.com、『MOBY』より 引用)

タクシードライバーはトラブル防止のため、利用客の身体に触ることを禁じられています。そこで苦労するのが、乗車中に眠ってしまった人への対処です。

「やっぱり泥酔している単独客は寝落ちする確率も高いですね。目的地に到着する少し前から窓を開けてみたり、ラジオの音量を上げてみたりするのですが、起きない人はとことん起きません。

目的地に着いてから何度も声かけし、スマホのアラームなんかを何種類か鳴らしてみて……どうしても起きないようなら警察の手を借りざるをえません。それはそれで、起きたお客さんが混乱して怒り出すケースもあるので、なるべく避けたいんですけどね。

最近困ったのは、眠ってしまった女性の服がはだけ、下着が見えてしまっていたケースです。そのまま起こせば何か勘違いされてしまうかもしれないですし、かといって起こす前にこちらが衣服に触れて整えておくのも……。

結局、目的地で一度メーターを切ってから、周辺をぐるぐる走ることにしました。窓を開けたり閉めたり、ブレーキを気持ち強めに踏んだりしているうちに起きてくれて、幸い何事もなく済みました」(60代男性・ドライバー歴18年)

少しでも身体に触れてはいけない、という制限があることにより、タクシードライバーは日々細かな気苦労を重ねているようです。

目的地を教えてくれ!

タクシードライバーが語った“勘弁してくれ”なヤバ客エピソード
(画像=©Monet/stock.adobe.com,『MOBY』より 引用)

タクシーを利用するからには、皆どこかしらの目的地があるはずです。しかし案外、目的地があいまいなまま乗車してくるお客さんも多いのだとか。

「まずやっぱり泥酔している方ですね。目的地が告げられないほど酔っている場合には、申し訳ないですが乗車をお断りさせていただいています。

もちろん酔っていない方でも、施設の名称や住所を把握されていないことは結構あります。『○○町の病院』と言われ、その町には病院がいくつもあったりとか。大抵は特定できるくらいの情報は出してもらえますけど、行ってみたらやっぱり違ったというケースもあって。『間違ったんだからその分の料金は払わない』なんてこともあるので、目的地があやふやな状態では出発しません。

あとは『この辺で一番うまいメシ屋』とかですね。そういうのが得意なドライバーもいますけど、自分はあまり食に関心がないので、評判をよく聞くお店を提案するくらいで。穴場的なお店を期待されているとしたら、ちょっと申し訳ない気持ちもありますね」(60代男性・ドライバー歴7年)

タクシードライバーに対して、「そのエリアのおいしいお店を知っている」というイメージを抱いている人は少なくないかもしれません。しかしやはり、ドライバーにもそれぞれ個性があり、経験もまちまちですから、持っている情報の種類や量はさまざまなのでしょう。