では、これだけ円安が進めば私の事業である日本の不動産事業をする投資妙味があるのではと言われるかもしれませんが、私がテリトリーとする地域の地価はこの1年だけでも8%程度上昇しており、10年スパンでみると4-5割近い上昇になっています。建築費も大幅に高騰したのに賃料はそんなに上がっていません。ならばこの条件下で住宅投資をしても円安であっても十分な利回りは確保できないのです。

では誰にもわからない今後の為替について個人的考えだけ述べておきます。

まず、為替介入です。財務省がここにきて口先介入をしています。財務大臣や神田財務官がつぶやいているのですが、もしかすると実弾介入をする可能性もあります。基本的には効果は果てしなくゼロの近いのですが、「調子に乗りすぎている連中に一発かます」という意味合いでは「打ち水」の様なもので、冷やし玉にはなると思います。

介入という手段がもはやほとんど意味をなさなくなったのは国際協調介入ができなくなったこともありますが、為替市場があまりにも莫大な規模になり、一国の財務省が為替を動かせるような時代ではないということです。22年の為替市場規模は7532億㌦で毎年、着実に大きくなっており、28年までに1兆1432億㌦まで膨れ上がるとされています。

では放置プレイをするとどうなるのでしょうか?理論的には為替は各国の通貨量(マネタリーベース)の比率が一つの基本とされます。日米でそれを当てはめると確かに2020年ぐらいまではそれが指針にみえました。ですが、それ以降、それが当てはまらなくなっています。それはアメリカのマネタリーベースが金融引き締めにもかかわらず増え続けているからです。

2020年2月のマネタリーベースはコロナ緩和が始まるところで345兆ドルでした。金融引き締めに入ったのが22年2月ですが当時は既に600兆ドルまで膨れ上がっていました。ところがそれ以降、FRBが急速に引き締めたはずなのに24年1月でも580兆ドルもあるのです。その為、日本とアメリカのマネタリーベース比率でみるとコロナ緩和から引き締めに入った22年以降、マネタリーベースの日米比率はおおむね1.1から1.2で変わっていないのです。とすれば今の円安をマネタリーベースで説明できないのです。

素人目にみると現在の円安は①円を借りて海外投資する円キャリー取引が膨れていること。これは22年初めが6兆円規模でしたが23年12月には11兆円程度まで拡大しています。②国内経済の指標であるGDPが伸びず、投資先としての日本の魅力を欠いた ③日本向けの直接投資が減っていること。これは日本企業のレパトリが減るなら海外企業の日本への直接投資も減るのは自明です。いずれにせよ円の需要が減り、ドルの需要が高まっているという大きな流れは変わらないのでしょう。ならば、上述のマネタリーベースの比率が為替レートの基本という考え方に係数である「ジャパンプレミアム」をかけざるを得ないということにもなります。

今の円安がどこまで進むのか私はわかりませんが、少なくとも過去の理論値を超えていることは間違いなさそうで、その理論の根底にある諸条件を見直さないといけないと現在のあるべき理論値が出てこないようにある気がします。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年3月28日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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