夫婦で交代しながら1700kmを夜通し一気にドライブすることも!
久々に極寒の日が続いた1月でしたが、2月は一気に春らしくなり、公園や野原のクロッカスやスノードロップが一斉に咲きはじめたミュンヘンです。やわらかい春の日差しが感じられつつも、まだまだ天気予報には雪マークが付く事もありますが、春はもうすぐそこに。私の愛車はまだ地下のガレージで眠ったままですが、春になるとまた怒涛の長距離ドライブの日々がはじまります!

私を唸らせる長距離ドライバー日本人女性が実は身近にも!? 彼女の名はNILO(ニロ)さん!ミュンヘンの姉妹都市である札幌の出身で、ドイツ人の旦那さまとのご結婚を機にミュンヘンへ移住。今年でドイツ在住12年目を迎える彼女の職業は、なんとミュージシャン。二人の子供の子育てと主婦業をこなし、ミュージシャンとしてドイツと日本を中心に、世界へとその活動の場を広げています。多忙なスケジュールを割いて、まるでメルヒェンの世界にいるようなステキなご自宅に迎え入れてくださった彼女の大好きなカーライフを聞いてみました。

—透き通る歌声がとても癒しになるNILOさんですが、カーメディアには初登場との事ですので、まずは自己紹介をお願いします。
NILO:2007年に日本でボサノバシンガーとしてデビューしました。出産と子育てで暫く音楽活動を休止していたのですが、上の子供が幼稚園に入ったのを機会に少しずつ活動を再開しました。
トラディショナルなジャズバーでのライブではボサノバやジャズを歌っていますが、昨今のドイツでの日本ブームもあり、日本イベントでステージに立つ機会も増え、若い世代に向けて童謡、シティポップやゲーム音楽、アニソンを日本語歌詞のままで歌ったり、オリジナル楽曲も積極的に取り入れていますが、ファンの方の熱意には圧巻です。ゲームやアニメ、音楽を通して日本の事に興味を持ち、好きでいてくれる方たちが世界に多くいるという事に、日本人として誇らしくとても嬉しい気分ですね。

—NILOさんをSNSでフォローしていると、バリバリにクルマを運転しているようですが、ドイツに移住する前も日本でカーライフをエンジョイされていたのですか?
NILO:実は……日本で18歳の時に取ったMT免許を取ってから一度も運転をした事がなく、長い間ペーパードライバーだったんですよ。それこそエンジンの掛け方さえ忘れているような状況で(笑)。当時、主人が所有していたクルマがMT車で左ハンドル=右手でシフトチェンジ、おまけに縦列駐車がネックとなり、長年のペーパードライバーだった私にはハードルが高くて遠ざけていました。

—いまのNILOさんからは想像がつかないですね。では、どうしてその状況からクルマを運転する事になったのでしょうか?
NILO:ほぼ年子の子供がおり、子供と荷物を積んだベビーカーでの公共交通機関の移動が厳しくなり、少しずつ運転の必要性を感じました。ミュンヘンの交通公共機関は発達していますが、例えばクルマでは20分なのに、電車とバスを乗り継ぐと目的地まで1時間半も要するような場所も多いのです。また、エレベーターやエスカレーターが故障している事も多々あり、必ずしも便利という訳ではありません。また、少しずつ音楽活動を再開したのはよいものの、ライブ会場には機材がなく自宅からアンプやマイクスタンドを持参する必要な場合も多々あり、さすがにこれらを電車で運ぶには非常に厳しくて。

—日本の運転免許を所有していると、ドイツでは基本的に書き換えるだけで良いのですが、もしや、ペーパードライバーのままいきなり運転再開!?
NILO:さすがにそれはマズイ、エンジンの掛け方さえ覚えてなかった位ですからね(爆笑)。でも、主人に助手席に乗って貰っての練習は考えていませんでした。だって絶対にケンカになる事は間違いない! 自宅近辺にあった教習所へ問い合わせ、ペーパードライバー教習を受講する事にしました。一回目はシミュレーターでエンジンの掛け方、クラッチの使い方から徹底的に学び直しましたが、20回もエンストもしてしまいましたよ(笑)。今ほどドイツ語もまだ分からない頃でしたので、教官にクップルング(クラッチ)の事を言われても、クップルングって何ですか? という感じだったので、教習所でドイツ語も一緒に覚えられて一石二鳥でした。
—以前のご自宅前の道路はかなりの駐車場難エリアでしたよね。ペーパードライバーに縦列駐車はかなりハードルが高かったのでは?
NILO:アパートの前の道路はあまり広くない上、片道一車線で交通量が多く、トラムが通っている関係で、空いているスペースを見付けるとかなり素早く縦列駐車をする必要があるので、後続車からの圧もプレッシャーでした(笑)。場合によってはトラムの運行も止め兼ねないですから。でもフシギなもので、毎日やっていると出来るようになるもんですね。極狭の所に素早くぴったりと停められた時には自分でも嬉しくなりますよ。

—それまではミュンヘン市内やその近郊で運転されていたようですが、長距離ドライブに目覚めたきっかけは?
NILO:ある日、ベルリンでライブを行う事になり、楽器に加え多くの重い機材や衣装も持っていく必要があったのですが、これらを持って何度も乗り換えをこなすのはムリだと感じ、遠出は初めてでしたが思い切って自走でベルリンまでの片道約600kmを走ってみたのです。最初こそドキドキでしたが、意外と問題なく走れた事もあり自信にもなりました。
—SNSでは最近日本でも人気のあるスペインのバスク地方のサンセバスチャンや、ヨーロッパの各国に自走で家族旅行に行ってる写真が出てきますが、例えば、ミュンヘンからサンセバスチャンは片道どれくらいの距離があるのでしょうか? 私はひとりで一日最高1300km程を運転した事がありますが、かなりキツかった記憶が……。
NILO:義兄がスペインとの国境近くのフランスのビアリッツ在住という事もあり、我が家は年に1~3回程、義兄を訪ねて大移動をしているんです。サンセバスチャンまでは片道は約1700kmですね。実は、ウチの家族は例えスペインのような遠くへ行く際にも途中で一泊せず、夫婦で交代しながら一気に一晩で走り切るんですよ(笑)。ルーフキャリアにサーフボードやサップのボードを積み、トランクにはキャンプ道具や衣服等をキュウキュウにオクタヴィアに詰め込んで出発します。
義兄の自宅近辺に私たち家族のお気に入りのキャンプ場があるので、そこに滞在しながら、自炊をしたり、サンセバスチャンの近隣のおいしい物を食べに出掛けています。家族でキャンプが趣味とあり、クロアチアやスペイン、フランス等で気に入ったキャンプ場は何度もリピートをしているんですよ。

—片道約1700kmを夜通し夫婦で交代しながら運転し、着いたらすぐにキャンプ場設営とサーフィン、ワイルド過ぎます(笑)。
NILO:主人いわく、「一泊する時間がもったいない」。一刻も早く着いてサーフィンをしたいそうなんです(笑)。なので、助手席に乗る=しっかり寝て次のスティントへ向けて体力回復に努めるのが、我が家の旅の鉄則です!
