
GT-Rは、いつも世界最高を目指している!
GT-Rは進化するスポーツカーだ。R35が登場して17年、ここ数年はずっと「これで最終か」といわれながら、2024年モデルでは懸案の音量規制をクリア、外観デザインにかなり手を加えて登場した。


デビュー当初のR35は、ニュルでタイムアタックした車両と基本的に同じ仕様がそのまま入手できることが価値のひとつだった。それが、現開発責任者のもと、公道向けと性能追求版が切り分けられた。後者の代表である「NISMO」が登場して10年。NISMOはそのとき採用可能なレーシングテクノロジーを積極的に盛り込んだスペシャル版であり、GT-Rのポテンシャルをフルに引き出す調律が施されている。
試乗車は、高精度重量バランスエンジンパーツや専用のアルミ鍛造ホイールが与えれた「NISMO Special edition」。価格は、従来モデル比で約400万円も上がり、ついに3000万円の大台が見えるところまで来た。ちなみに、R35登場時の価格は777万円だった。それでも当時は高いといわれたものだ。
NISMOの随所に配された空力付加物はレースの世界と直結する。このクルマが味わわせてくれるのは、レーシングテクノロジーに裏打ちされた、世界最高レベルの性能にほかならない。
最高出力600ps! 最新GT-Rは圧倒的に速く、クルマとの一体感も高い
ドライブフィールは刺激的かつ衝撃的である。まずエンジンが強烈だ。国内最強の600ps/6800rpm、652Nm/3600〜5600rpmを誇るVR38DETT型は、踏めばどこからでも即応し、あっという間にトップエンドまで吹き切ってしまう。パワーの盛り上がりは驚異的。その加速フィールは、目が追いついていかないほど。シートにグッと体が押しつけられる感触からも高性能を実感する。正直なところ、実力をフルに発揮させるにはサーキットに足を運ぶ必要がある。
「性能を第一義に追求して開発したエンジンであり、そこにいわゆる官能的なものは必要ないと考えた」という当初の開発責任者の言葉を思い出す。官能的かどうかにかかわらず、やはり圧倒的な高性能というのは、それだけで価値がある。


GT-Rはとてつもなく速いだけではない。新しくなるほどフィーリングがよくなっている。最新版は伸びやかな吹き上がりに一段と磨きがかかった。
騒音規制に適合した音もいい。従来の低く野太いサウンドは、やや控えめになったが、航空機用エンジンのタービンブレードから着想を得たというジェットサウンドジェネレーターはよい仕事をしている。従来とはひと味違った、新感覚のサウンドを楽しませてくれる。
Rモードを選択すると、アクセルオフ時にレーシングカーのようなパンパンという音が出る。これが気分を高める。さらには、アクティブ・サウンド・コントロールもドライバーを心地よく刺激する要素だ。走りと直接的に関係のない演出的な味付けは採用しないのがGT-Rの流儀だったはずだが、海外の列強のように、あったほうがよいと判断されたようだ。
GT-Rがかねてからコンセプトとして掲げる要素に、「トラクションマスター」がある。いくら強力なエンジンがあっても、それを速さに結びつけるためには、路面に動力をいかに伝えるかが大切、すなわちトラクションの確保を最優先した思想だ。
ハイグリップタイヤ、サスペンション、駆動システム、エアロダイナミクスといった一連のメカニズムを磨き上げてきたGT-Rの進化の歴史は、つまるところトラクションの進化にほかならない。