ESPAÑA, AMNISTIA HECHA PARA PUIGDEMONT.17-03-2024.

3月14日、スペインで3度目のクーデターが遂行された

3月14日、スペイン下院において恩赦法が可決した。結果は賛成178票、反対172票。スペインで民主政治が施行されてから3度目のクーデターである。1度目は1981年2月23日に治安警察隊と軍部によるクーデターが遂行された。これは当時スペインのファン・カルロス国王の大活躍で半日で未遂に終わった。筆者もこの目撃者であった。

2度目は2017年10月1日にカタルーニャ州政府が独立の為の違法住民投票を実施してカタルーニャ州の独立を宣言したことである。幸いなことに、これも未遂に終わった。そのあとカタルーニャ自治政府は中央政府によって一時的に停止された。

そして3度目のクーデターが今回の恩赦法の下院での可決である。この恩赦法はスペイン憲法に背く法律だ。ベルギーに逃亡しているカタルーニャ州の元州知事プッチェモン氏と他数名がスペインで逮捕されることなく帰国できるようにさせるのがこの恩赦法である。その為に味方になっているのがサンチェス首相だ。

サンチェス首相の政権に維持したいという欲望がクーデターを招いた

サンチェス氏は自らが政権を維持したいという欲望からカタルーニャとバスクの独立派の支持を取り付けて過半数の支持票を得て首班指名に臨んだ。それで彼の首相継続が可能となった。

しかし、独立派から支持票をもらうためには交換条件があった。それがプッチェモン氏と他数名がスペインで逮捕されることなく帰国できるようするということであった。これがこの恩赦法である。それが今月14日に下院で可決したのである。

今年7月の総選挙の前までサンチェス首相は彼ら政治逃亡者が恩赦によってスペインに帰国できるようにするということに彼自身が反対していた。また彼の社会労働党の121人の議員も全員が恩赦に反対していた。なぜなら、彼らに恩赦を与える行為は憲法違反になるからである。しかも、彼らはカタルーニャ州を独立させるのが彼らのプランである。

ところが、サンチェス首相は約束した交換条件を満たす必要があった。彼らをカタルーニャに逮捕されずに無事に戻すことであった。一国の首相がスペインの統一を乱す独立派に味方するというのは正に国賊にも匹敵する行為である。が、それをサンチェス首相はやったのである。

自らの欲望を満たすためには嘘も平気で言うのがサンチェス首相

そこには以下のような背景があった。先の総選挙で社会労働党は国民党の前に敗退。前者は121議席、後者は137議席という結果になった。最大議席数を獲得した政党が政権に就くというのがこれまでの慣例であった。

ところが、国民党が安定した政権を運営するには過半数の176議席が必要であった。172議席までは票を集めることができたが、4議席足らない。

一方のサンチェス首相は地方の独立派政党の支持を取り付けて178議席に至ったのである。独立派政党の中にはスペインの元テロリスト「エタ」からも支持を取り付けた。800人を暗殺したエタが母体の政党ビルドゥから支持を取り付けたのである。

首相がステーツマンとしての意識があれば、暗殺者の政党を味方につけるなど到底できないことである。ところが、サンチェス首相はこれまでもそうであるが、自らの欲望を満たす為には嘘を平気で言う人物である。自らの欲望を果たす為には「母親でさえ犠牲にする」と言われている人物だ。エタという元暗殺集団の政党から支持を得ることに些かの躊躇いもないのが彼だ。

また公式の場で、スペイン国王フェリペ6世の前を平気で歩く人物でもある。国王の存在に気づかない風を装っての行動である。スペインが共和国になることを望み、共和国に成ったら自ら大統領に成ろうという欲望が見え見えの人物なのである。

逃亡者プッチェモン元州知事との約束を憲法を違反してまで果たしたサンチェス首相

プッチェモン氏の政党ジュンツ・ペル・カタルーニャが下院で持っている7議席は首班指名の時に最も重要な議席であった。だから、ジュンツは「7議席は首班指名で支持に回る。その代わりに、プッチェモン氏ら他数名がスペインに逮捕されることなく帰国できるようにして欲しい」という交換条件を出したのであった。

社会労働党の組織委員長とプッチェモン氏らが数度の交渉の上で、彼らが帰国できるようにしたのが今回の恩赦法である。その可決の為に、サンチェス首相は自らの政党の議員全員を賛成に回したのである。

多くの議員は恩赦法には内心反対しているのは明白だった。しかし、彼らもサンチェス首相の方針に背くと議席を剥奪される恐れがある。何しろ、サンチェス氏は党の執行部のトップで、彼の方針が党の方針となっている。だから、彼に背いて議席を剥奪されれば、明日から職場を探さねばならなくなる運命にある。だから、気骨も主義主張もないサラリーマン議員は仕方なく首相の支持に従うことになるのである。

サンチェス首相にとって、プッチェモン氏が帰国できる道を与えてやれば、本年度の予算案も下院で可決できると考えていた。予算なく議会を運営して行くのは困難であるし、またそれを議会に提出するのは政府の義務である。