では日本では書店が儲からなくて苦労しているのになぜおまえはカナダでやっているのか、と言われればほかに競合がいないから、というのが正解。私どもはカナダで唯一の正規ルートの日本の書籍の卸と書店をやっているのです。では儲かるのか、といえば私どもは扱い書籍数が限られますので大したことがないですが、アメリカで展開する紀伊国屋書店さんの場合はアメリカ事業の営業利益率は5割を超えていると以前記事を拝見したことがあります。その理由は販売価格にあります。我々海外では販売価格が自由なのです。定価に縛られません。理由は輸送コストがあるからでそれを価格転嫁しないと商売が成り立たないのです。

ところで私どもは大学や日本語学校向け教科書販売と図書館向け配本という特殊な業務があるので小売りよりも卸としての機能のほうが大きくなっています。では小売りはどうしているのかといえば基本的には注文ベースです。在庫は限界まで絞ります。その代わり欲しい本を日曜日までに注文頂ければ最速金曜日には手にすることができます。一方、在庫を抱えながら勝負しているのがアニメ関係の書籍。これはアートブックのようなディープな趣味の領域の書籍が主流で、私どももそのようなイベントに参加してその手の書籍に集中して販売しています。ほかの書籍は一切販売しません。理由の一つは日本人が買わないからです。なぜかといえば本の裏に1000円と印刷しているのにそれより高い金額の値札が付いているので「損をしている」という印象が先にきてしまうからです。しかし、地元の人は欲しいから買うなのです。

では表題の書店振興プロジェクトですが、実態としてはまだこれからのようです。私が意見できることは以下のことかと思います。

書店は定価制度で2割の利益率ではやっていけないし、ビジネスの面白みは皆無 返本制度なので売れ線の本は配本となり、減配が当たり前で大手ばかりが売れ線をゲットできる仕組みが存在する。(我々が10冊注文しても2冊しかもらえないの意) 書店が出版社と直取引をどんどん進めるべき。理由は取次は営業をしないけれど出版社はするから。つまり売りたい本を出版社は書店に直接伝えることができない。出版社の意図が書店に伝わらなければどうやって書店は顧客に営業をかけられるのか?

つまり今の書店販売の仕組みがあまりにも硬直過ぎてビジネスにならないのです。それを誰も指摘しない、これは書店と出版社が声を上げるべきでしょう。また定価制度と返本制度は選択制にすべきで買取の場合はもっと利益率がほしいところです。たぶん、5-6割ぐらいの利益率がないと書店経営の面白みはないと思います。返本制度がなければそれは可能だと思います。

書店振興プロジェクト、さて、どんな展開ができるか、傍で様子を見ようではないでしょうか。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年3月19日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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