日本を支えたアメリカ、そして中国市場。次の30年にも期待が持てる

 しかし、金融経済が実体経済をはるかに上回っていたことで、1991年に日本のバブル景気は崩壊。国内経済は急減速を強いられた。バブル景気が崩壊してからの自動車産業界を下支えしたのは、圧倒的なスケールを誇るアメリカの自動車市場だった。日本の自動車メーカーは信頼性が高く、燃費に優れた製品を次々とアメリカに投入。爆発的な人気を呼び、落ち込みつつある国内の需要を補った。電気産業も同様で、内需の落ち込みを輸出によってカバーしたのである。
 その後の日本の自動車産業界は、アメリカに続いて台頭した中国市場にも進出。結果として「失われた30年間」ともいわれる国内の景気停滞をなんとか生き延びることに成功した。

【時代の証言】あのバブル期の「チャレンジ精神」が、現代の魅力あるクルマの原点。日本は凄かった! by大谷達也
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【時代の証言】あのバブル期の「チャレンジ精神」が、現代の魅力あるクルマの原点。日本は凄かった! by大谷達也
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 では、1980年代から1990年代にかけて見られたあの“輝き”は、日本になにを残し、どんな未来をもたらそうとしているのか? いまの日本の自動車産業界が高い競争力を保っていられるのは、バブル景気の時代にありとあらゆるチャレンジを行ない、様々な技術と経験を習得したからにほかならない。そのとき得た“財産”で、日本はその後の30年間を生き延びてこられたといって間違いないだろう。

 そのいっぽうで、日本人らしいきめ細かさや、地道に進化/熟成させていく姿勢も、この30年間の日本の発展に大きく役立ってきた。おかげで、自動車産業に限らず、様々な材料技術でいまも日本は世界のトップに立っている。個人的には、そうした技術資産を活かせば、次の30年間も日本は輝き続けられると予想している。不足しているものがあるとすれば、様々な要素技術をひとつの革新的な製品としてまとめあげるアイデアと、ちょっとした自信だけだと、私は強く信じている。

提供元・CAR and DRIVER

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