ところで、派閥の意義について「政策を勉強して研鑚を積み、若手政治家がそこで教育してもらうので効用がある」とは麻生副総理の持論だが、時を同じくして、台湾総統選に勝利した頼清徳氏が17日、所属する民進党最大派閥「新潮流派」を退会すると報じた現地紙が、同様の派閥の効用を書いている。
頼氏は17日、「頼清徳氏は新潮流派のメンバーではなくなる」と同派が発表したことを受け、党中央常務委で「民主政治は政党政治だ。政党内の政治団体にはその機能があるものの、国政をより客観的に推進し、党内の団結を図り、党をリードするため、即日から新潮流派を退会する」と説明した。
この発表を受けて野党国民党は、「06年に民進党は派閥解散を決議したのではなかったか。頼氏は派閥を離脱する前に、派閥解散の決議を守るべきだ」と難じた。国民党のある立法委員は、民衆党が正副立法院長の選挙で民進党と協力すれば有権者を欺くことになる、と民衆党に対して釘を刺した。
国民党は立法院議長に、比例一位で当選した韓国瑜前高雄市長の就任を目指している。キャスティングボートを握った民衆党の動向が気になる国民党としては、民進党は「派閥は存在しない」と言い続けてきたのに何だという訳だ。陳水扁政権下の06年に派閥解消を宣言した民進党だが、新潮流派が政策に影響を与えきた実態がある。
投票前の11日、人民日報傘下の英字紙『環球時報』は「分離主義者の活動と頼清徳氏が創り出そうとしているいわゆる「新潮流(new situation)」は台湾海峡の荒波による危険な状況になるだろう」との国務院台湾弁公室報道官の発言を報じ、台湾の有権者を牽制していた。
確かに、84 年に国内の台湾独立活動家が創刊した雑誌『新潮流』のメンバーで発足し民進党の新潮流派は、蒋親子の強権政治に懲りて群雄割拠だった穏健な他派閥に対し、当初は党憲章に台湾独立を盛り込むよう圧力を掛けるなどした。が、後年は現実的な路線に転じ、党内の最大派閥となった。
その秘訣は新潮流派が新人育成に最も長けているからだという。他派閥議員の側近でキャリアをスタートする者が訓練や昇進の機会に欠けるのに比べ、新潮流派議員の側近は、留学資金や組織階層の昇進の支援などを含め、派閥からの恩恵をより多く享受できることで、短期間に議員を養成できたとされる。
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さて、これまでも自民党は派閥の解消と再結成を繰り返して来た。それは政党に限らず人が大勢集まれば、何らかのグループが様々な理由で必要になるからだ。例えば安倍元総理が頭角を現せたのも、今も存続している保守グループ「創生『日本』」の場で中川昭一氏らと拉致問題などで研鑚を積んだからこそのこと。
岸田首相も政策集団の存続には含みを持たせているようだ。現実に安倍派は「清和政策研究会」、茂木派は「平成研究会」を名乗る政策集団だし、党内には「創生『日本』」の他にも「日本の尊厳と国益を守る会」などの政策提言グループや菅グループなどいくつも存在する。
政治資金規正法上は、政治団体でなくとも収入が1000万円を超える政治資金パーティーを開催する場合、その団体は政治団体とみなされて政治資金規正法の規定の一部が適用される。よって派閥とグループの違いの一つはパーティー収入の多寡とも言え、ならば派閥解消ではなく政治資金パーティーを辞めれば良いではないか。
岸田首相がどういう出来上がりの姿を描いて宏池会解散を口にしたのかは判らない。が、政策グループに移行するだけなら、派閥解消などと受けを狙うような大言壮語をすべきでない。解散する派閥はあるは一部派閥やグループは残るはで「何か申し上げる立場にはない」が、自民党総裁としてのリーダーシップといえようか。
「軽挙妄動」とは「軽はずみに何も考えずに行動すること。是非の分別もなく、軽はずみに動くこと」を指す。トップリーダーがこれでは「自民はおろか日本も危うい」。自民党議員はいつまで唯々諾々とこの総裁に従うつもりなのか。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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