NHKより

岸田首相は19日のぶら下がり会見で、「政治の信頼回復のために、宏池会を解散すると申し上げた。ただ、各派閥のありようについて何か申し上げる立場にはないと考えている。いずれにせよ、(自民の)政治刷新本部における信頼回復の議論をしっかりと進めていきたい」と唐突に述べた。

筆者は一昨年9月、首相が前月の内閣改造で旧統一教会及び関係団体と関係のあった全閣僚を更迭し、自党議員にも以後の関係断絶をさせた事態に、「岸田のままでは自民はおろか日本も危うい」と本欄に寄せた。その後も、強行したLGBT法案のフォローもせぬ一方、突然の増税発言や今回の派閥解消発言など、軽挙妄動を思わせる言動が相次ぐ。

首相発言の翌20日、五人衆のうち萩生田・西村不在で総会を開いた清和会は派の解消を決め、二階氏率いる志帥会もこれに続いた。が、志公会の麻生会長と平成研究会の茂木会長は19日、岸田首相と個別に会談し、派閥を存続させたい意向を伝えたことが20日に報じられた。彼らに諮らず独断専行したということだ。

筆者は、この問題で先ずやるべきは、収支報告へ記載を徹底させ、金の出入りを透明化することであり、そうすれば過度なパーティーや寄付は自ずと抑制される、と本欄に書いた。つまり今回も、首相がメディアや一部世論に迎合して、「羹に懲りて膾を吹く」式に必要以上の対応を取ったように思う。

そもそも首相は、ついこの間まで固執していた宏池会の会長を、パー券問題が持ち上がり始めるが早いか辞めたはずではなかったか。派閥を辞めた者がその派閥の解消を指示するなら、それは首相の会長退任が見せかけだったと白状するに等しい。また「政治刷新本部」での自由な議論を制約する。

筆者は、岸田首相の憲法改正や原発再稼働の取り組み、日米韓の関係強化などを大いに評価する。他方でこれらが、岸田以外の首相では出来なかったことか、との自問があり、むしろ世間の非難の声に過度に反応するかのように軽挙妄動する、先述した様な唐突な言動のマイナスが勝つのでは、と自答するに至っている。