いざ、異世界の扉を開かん
護摩堂に入ってまず目に飛び込んできたのは、天井にある大きな丸い“何か”。おそらく煙を外に逃す通気口かなにかなのでしょうが、まるで宇宙船のエンジンのようです。思わず「わぁ!」と驚きの声が漏れました。
護摩祈願が始まると、お坊さんはお経を読みながら油と護摩木を次々に炎に投げ入れていきます。炎はどんどん大きくなり、2、3mほどの高さに。その光景は今にも飛び立とうとするスペースシャトルのようにも見え、10mほど離れた位置に座る私たちにも、その熱さと熱気を感じるほどでした。
ごうごうと勢いを増す炎。時折パチパチと爆ぜる音が聞こえます。BGMのように響いていたお経にもさらに力が入ってきたと思ったその時でした。
ドンドンドンドンドンドンドンドン・・・・
私が座っているすぐ横で、若いお坊さん二人が、人の背丈ほどもある大きな太鼓を叩きはじめたのです。
暗くて表情までは見えませんでしたが、一心不乱に叩いている様子が空気から伝わってきます。太鼓の速さは8拍子。狂いなく単調に軽快に、そして重々しく護摩堂に響きます。
地の底から響いてくるような重低音は、お経と合わさり、その場を独特な雰囲気で包んでいきます。まさに異空間。お経と太鼓の音、護摩木と油と煙の匂い、地獄の蓋が開いたみたいな炎の熱と光。五感にとっては情報過多。眠くもないのに瞼が重く、時間の感覚も失われていくようでした。
「これは確かに、やばい...!」
閻魔様の御前て、もしかしたらこんな感じなのかもなぁと、ぼんやるする頭で思いました。
地域にはまだまだ知らないことだらけ
どれくらい時間が経ったのかわかりませんが、しばらくすると護摩堂にいる人たちが一列になって、火の周りをぐるりと回りながら不動明王像にお参りします。普段は心神深い方ではありませんが、この時ばかりはしっかりと手を合わせて一年の無病息災をお祈りしました。
帰りは、また長い洞穴の道を通って出口へ。靴を履いて屋外に出た時の「元の世界に戻ってきた感覚」は何とも言えず、お正月の冷たい空気がとても心地よく感じられました。
こうして私の初めての鯖大師参拝は終了し、境内で配られていた無料のお汁粉をいただいて帰宅。帰りの車の中では友人と「すごかったね」「行ってよかったね」と興奮気味に感想の話し合いに夢中になっていたら、帰り道を間違えてしまうほどでした。
四国の右下に住みはじめて数年、まだまだ知らないことが地域にはたくさんあるんだなと実感したお正月。もっと土地の面白さを探して、歩き回りたいなと思った新年の幕開けでした。(フリーライター・甲斐イアン)
■Profile
甲斐イアン
徳島在住のライター、イラストレーター。千葉県出身。オーストラリア、中南米、インド・ネパールなどの旅を経て、2018年に四国の小さな港町へ移住。地域活性化支援企業にて、行政と協力した地方創生プロジェクトの広報PR業務に従事。21年よりフリーランスとなり、全国各地の素敵なヒト・モノ・コトを取材しています。
提供元・BCN+R
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