客側に求められる最低限のマナー

 今回のように飲食店の店主やスタッフがお客に対して怒るというケースでは、どのような理由が考えられるのか。自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏はいう。

「飲食店の店主やスタッフがお客さんに対して怒りを覚えるということは結構ありますが、それを表に出すケースは稀だと思います。お店の店主もサービス業に従事していることを自覚しているはずですし、お客さんのなかにはいろいろな人がいることも分かっているはずですので、よほどのことがないと怒りを表に出すことはないでしょう。怒りやイライラをこらえているときは、表情や態度に出やすいので、お客さんに気づかれてしまうこともあります。そういった場合、お客さんが『この店はなんか感じが悪かった』とマイナスなイメージを持ち、口コミサイトやSNSに投稿することもあるでしょう。

 サービス業に従事する人も人間なので、『仕事だから』とすべてを割り切れたり、絶対に怒らないという人はいないでしょう。沸点や琴線は人によって違いますが、感情ある人間ですので仕方ないことです」

 高級寿司店をめぐっては「客が店主から怒られた」「店主が客に不快な表情・態度をみせた」といったケースがしばしばあるという話は聞かれる。

「職人の経験や職場環境、価値観による部分が大きいと思います。『職人さんは気難しい人が多い』という話もよく耳にしますが、私が銀行を脱サラして飲食業界とかかわってきた約25年、300人以上の職人さんとお話していて感じることでもあります。職人は表現者でもあり、自分の価値観を優先したり、喜怒哀楽の激しい人も結構います。サラリーマンと違って、職場が変わっても基本的な仕事内容は同じで自分の技術がウリなので、何かあれば辞めやすいという事情もあるでしょう。いまだにパワハラや労働基準法違反の匂いがする職場さえあります。周りに沸点が低い人や独特の価値観を持っている人も多いので、それに慣れてしまうこともあります。そうはいっても、最初からお店や自分のマイナスになるような態度をとることはないことでしょう。

 個々のお店には『うちはこういうお店です』という自己主張があります。それがお客さんに受け入れられないお店は自然淘汰されていきます。客として店を利用する際には、まずは『郷に入っては郷に従え』でお店のスタイルに乗ってみることをお勧めします。それによって他のお店との違いや、そのお店のオリジナリティを楽しむこともできます。客として注意すべきことは、高級寿司店に限らず『他のお客さんやお店の人たちが不快になるような言葉や態度はとらない』という最低限のマナーを守ることです。具体的には『強い匂いの香水をつけない』『大声で話さない』ということです」(江間氏)

 高級寿司店で高いキャンセル料が設定されている理由は何か。

「料理は当日仕入れて当日仕込むものばかりでなく、数日前から業者に発注して仕入れたり、それを使って仕込んだりすることも多いです。スタッフの人数も予約状況に合わせてシフトを組み、予約で満席なら他のお客さんを入れられません。キャンセルが入れば、キャンセル料によって埋まらなかった席分の売上を補填しなくてはなりません。

 また、キャンセル料の事前提示は安易なキャンセルの防止にもつながります。お客さんのなかには、選択肢確保のためにわざとダブルブッキングしておき、ギリギリになって本命以外の店をキャンセルする人もいます。ひどい時にはキャンセルし忘れたり、したつもりになっていて来店せずにトラブルになるときもあります。これらの防止策として、意図的に高めのキャンセル料を設定・提示することもあります」

(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

提供元・Business Journal

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