多額の違約金リスク

 今回の買収では、米国規制当局の反対などで買収が不成立となった場合には日鉄がUSスチールに5億6500万ドルに上る違約金を支払う義務が発生する契約となっている。先月7日に行われた日鉄の会見でも森高弘副社長がその条件の存在を認めているが、山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。

「『企業買収』時の取り決めについてですが、一般的には、『企業買収が成功するために、当事者のどちらかが責任をもって何かをやること』といった規定があります。おそらく、今回、『USスチールの合併について、米政府の許可を得ること』は、契約上、日本製鉄の義務とされたのでしょう。このため、この義務を果たせなかった場合の違約金は、義務が課された当事者である日本製鉄が支払うことになるわけです。たいていの場合、『**することを誓約する』『誓約違反の場合、〇〇円の違約金を支払う』といった内容の契約条項があります」

 金融業界関係者はいう。

「約800億円の違約金というのは、安くはないものの、日鉄の年間利益(編注:24年3月期の連結純利益予想は4700億円)を踏まえれば、経営を揺るがすほどのものではない。M&Aにリスクはつきもので、日鉄としては多額の違約金リスクを抱えてでもUSスチールの買収に動く価値があるという経営判断なのだろうが、秋に米大統領選挙があることを踏まえれば現在起きている米国内の反応は予想できたはず。そして現実問題として、買収が成立するかどうかは、かなりグレーといえ、そのあたりを経営陣はどう見通していたのかは、今後問われるだろう」

(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

提供元・Business Journal

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