忖度(そんたく)は相手を推し量る・慮るなどの意味を持つポジティブな言葉です。しかし、最近はこびへつらう・顔色を伺うなどのネガティブな意味で使われることも増えました。
本記事では忖度の新旧の意味・使い方を、例文つきでわかりやすく解説。正反対の意味で使われる言葉だからこそ気をつけたいこと、言い換えに便利な類義語・対義語も紹介します。
- 忖度の本来の意味と新しい意味を解説
- 忖度を使うときの注意点
- 忖度の類義語と対義語
忖度(そんたく)の意味をわかりやすく解説
忖度(そんたく)とは、相手の考えや気持ちを推し量る、慮るという意味の言葉です。忖度の「忖」の字にも「度」の字にも、推し量るという意味を持ちます。
忖度の意味は変わりつつある
忖度は本来、相手の考えや気持ちを推し量るというポジティブな意味の言葉です。思いやりのある人に対して使う言葉といってもいいでしょう。
しかし、近年忖度の意味が変わりつつあります。相手の言葉を誤解してしまったり、相手に誤解されたりしないよう、本来の意味と新しい意味の両方を知っておきましょう。
忖度の本来の意味
忖度の本来の意味は推し量る・慮る・推察する・推測するなどです。平安時代の書物や中国最古の詩集で使われているほど古くからある言葉です。
忖度の新しい意味
近年、忖度は次のような意味で使われることが増えました。
- 機嫌をとる
- 顔色を伺う
- 意向を推し量りへつらう
たとえば上司の意向を推し量り自分の意見を曲げたり、政治の場面では一般の議員が首相や大臣などに気に入られるような答弁をしたり、相手の意向を察してこびへつらうような意味で使われることが多いです。
たしかにこれらの新しい意味にも、忖度本来の意味である「推し量る」「慮る」に通じるものがあります。
ただ、忖度は本来、ポジティブな意味での慮りをさす言葉です。最近はネガティブな意味で使う人も多くなりましたが、自分で使うときは、あくまでもポジティブな意味として使うよう心がけましょう。
忖度を使うときの注意点
忖度は本来の意味ではポジティブな言葉として、新しい意味ではネガティブな言葉として使われています。新旧正反対の意味で使われる言葉だからこそ、気をつけて使わなければなりません。
意味がたくさんある忖度は、誤解を与えやすい
意味がたくさんある忖度は、誤解を与えやすい言葉です。正しい使い方をすると間違った意味で捉えている人に、間違った使い方をすると正しい意味で捉えている人に、それぞれ誤解される恐れがあります。
「自分は正しい意味で使っていても誤解されるなんて」「間違って意味で覚えている方が悪い」と思うかもしれませんが、自分の伝えたいことが正しく伝わらなければ意味がありません。
誤解を避けるためにそもそも使わない、相手の反応に違和感を覚えたら確認するなどの配慮が必要です。
新しい意味で使うと印象が悪くなることも
「どうもこの場にいる人たちは、忖度を新しい意味で使っているようだ」と思っても、自分は新しい意味で使わない方がいいかもしれません。その場に忖度の正しい意味を知っている人がいた場合、「言葉の正しい意味、使い方も知らない人」と、悪印象を与えかねないからです。
「顔色を伺う」「こびへつらう」などの意味で忖度という言葉を使うことは、本来間違っています。これらの意味が少しずつ社会に浸透していき、忖度の正しい意味になっていくのかもしれませんが、それはまだ先の話です。
たとえば「一生懸命」は、もともと「一所懸命」の間違いでした。「つまずく」という言葉も、昔は「つまづく」が正しい書き方でした。言葉の意味や書き方は、時代とともに少しずつ変わっていくものです。
この意味で、忖度の新しい意味は必ずしも間違っているとはいえません。ただ、現時点では間違った意味・用法であり、使わない方がトラブルを避けられます。
ちなみに、現代において一生懸命と一所懸命はどちらも間違った言葉ではなく、それぞれ異なる意味を持つ言葉として使われています。一生懸命は「時間をかけて懸命に取り組む」という意味で、一所懸命は「今、この場でがんばる」という意味で使い分ける人もいます。
「一所懸命」は「一か所の領地を武士が懸命に守ること」に由来する言葉です。現代におきかえれば、「このプロジェクトチームで懸命にがんばる」「部長として会社に貢献する」など、ひとつの役割を懸命に果たすという意味で使えます。