自社で不要となった災害備蓄食や売れ残り在庫、ノベルティーを持っている企業と、それらがほしいフードバンクや子ども食堂などといった食料支援団体をマッチングさせる“寄付先マッチングプラットフォーム”StockBase。

そのStockBaseを運営しているのは、大学生で起業し、現在24歳となる関芳実さんです。

大学時代、StockBaseのもととなるビジネスモデルを練り、コンテストで入賞。起業することを決めましたが、何から始めれば良いのか分からないところからスタートしたそうです。

今回は、前編に続き、関さんが今に至るまでに、どんなことを乗り越えていったのか話を聞きました。

前編「“意識高い系”だけが起業する訳じゃない “普通の大学生”がStockBaseを立ち上げるまで:関芳実さんインタビュー(1)」はこちら

とりあえず法人格を!

就職活動をストップし、起業することを決めた関さんと友人の2人。ただ、具体的なやり方はそれまで分かっていませんでした。

「“とある学生団体”だと(企業と)契約もしてもらえないので、とりあえず法人格が必要という話になりました。(「起業プランニング論」の授業で)お世話になっている(大学の)教授からは「『どうせ契約できないから、とりあえず(法人を)立てなよ。きりが良いから4月1日にしたら!』と言われたんですが、あと1カ月しかないという状況で。

当時出ていたビジコン(ビジネスコンテスト)を通じてお会いした行政書士の方にお願いしたり、ネットで法人登記に必要なものを検索して自分たちで(やることを)リスト化したりして、頑張って1カ月で立てました」。

創業に必要な資金は、ビジネスコンテストの入賞賞金を充て、副賞として与えられた2年間の横浜市内にあるシェアオフィス利用権利を活用して、そのシェアオフィスを法人登記する住所としました。

“StockBase”という企業名は、共同創業者となる友人とスターバックスコーヒーの店舗で3時間ほど考えて決定。会社のロゴも、まずは自分たちでアイデアをノートに書き、それをPowerPointで表現しながら作りました。

自社サイトについては、当時外部に依頼するほどの資金の余裕がなかったため、ノーコードでサイトを作れるサービスを使って最低限の費用で作成したそうです。

これからどうしよう

なんとかかたちを整えて、法人を立ち上げたそうですが、

「サービスを開始するのに法人が必要だから立てただけで、『これからどうしよう』という感じでしたね」

と当時を振り返ります。

StockBaseが生き残るためには、既に話を聞いていただいていた大手デベロッパーと契約するしかないと考えました。

「『倉庫から(災害備蓄品を)1600(箱)ぐらい出したい』と言われたので、『わかりました、都内で寄付先見つけてきます』と返して、ダーッと子供食堂とかフードバンクとか(リストに)何百と書いて、電話していきました」。

そうして何とか見つけた契約先。契約の締結は、教授から紹介してもらった弁護士にお願いして進めました。

ただ、もともと関係があったこともあって最初の契約はうまくいったものの、次の契約先はなかなか決まらず。2カ月間ほどは、新たな契約を結べませんでした。

関さんたちは、Webサイトで募集をかけても難しいことから、名刺の渡し方や営業資料の作り方、法人営業のノウハウなど、「右も左も分からない」ところから調べたうえで、企業に直接お願いしにまわったそうです。

また、横浜市が実施しているスタートアップ企業への支援プログラムも活用し、事業計画書の書き方や資金調達方法などビジネスの基礎を学んでいきながら、企業とのコネクションもつくっていきました。

そうして事業を軌道に乗せていきながら、起業2年目からは、大学に復学。授業を受けたり卒業論文の執筆を進めたりする一方、仕事にも打ち込むという2足のわらじを履いていたそうです。

また、プラットフォーム事業以外にも、備蓄食の開発事業なども始めました。


横浜髙島屋と協業して「備蓄食品活用フェア」も開催

その後、無事に大学を卒業し、3年目となる今では、プラットフォームの契約企業は三菱地所や三井住友銀行、富士通エフサスなど、70社ほどにまで増えたといいます。

共同創業者だった友人は別の道に進みましたが、インターンや、システム開発を業務委託している人も加わって、従業員は5人体制にまで増えました。

今後の目標は、プラットフォームの活用を日本全国すべての地域に広げていくことだそうです。