2023年は宇宙開発競争が激化した年だった。世界のロケット打ち上げ数は212回で過去最高を記録。2024年2月にも米国のスタートアップIntuitive Machinesの「Nova-C」が民間企業として初めて月面着陸に成功するなど、宇宙開発のニュースが絶えない。McKinsey & Company, Inc.によると、宇宙産業は2030年には1兆ドル規模に成長するとのこと。

こうした状況で注目したいのが、衛星用のイメージング・ソリューションを提供する南アフリカのDragonfly Aerospace社だ。同社が開発したハイパフォーマンスなイメージング衛星や観測機器は、時間・コスト・リスクを最小限に抑えながら軌道上で運用することができる。

Image Credits:Dragonfly Aerospace

2017年に設立された宇宙スタートアップDragonfly Aerospaceは、南アフリカでも歴史の長い都市ステレンボッシュに本社を構える。ワインの産地としても有名なこの街は、ステレンボッシュ大学を擁する文教都市。その郊外にある「テクノパーク」は、日本の「つくば研究学園都市」のように多くの先進企業が集まる南アフリカ有数のビジネス拠点となっているのだ。

高スペックを誇る小型衛星用観測カメララインナップ

Dragonfly Aerospaceの主力製品はキューブサット用のカメラである。キューブサットとは「キューブサテライト」の略で、キューブ状で数キログラム程度の小型衛星を指す。現時点では一般的にリモートセンシング、宇宙気象測定、通信技術の実証などの用途に地球低軌道で使用される衛星だ。

キューブサットに搭載されるカメラは上空から広範囲を観察できること、画像解析のために高精細であることが重要となる。Dragonfly Aerospaceのラインナップの中でも最も高性能な「Gecko」は1U (65ミリ×90ミリ×105ミリ)で重量0.5キログラム以下というサイズながら空間解像度(地上サンプル距離)39メートル、観測幅80キロメートルとなっている※1。

Geckoの製品画像。Image Credits:Dragonfly Aerospace

また、「Chameleon SWIR」はSWIR(short-wave infrared)イメージング技術を備えたカメラで、ヒトの目には見えない赤外線を探知する。霧や雲の影響を受けにくい1000~1750nmの波長域4バンドを利用するため使用可能なデータが多く、最高レベルの解像度を実現するという。

SWIRイメージング技術は科学や産業、軍事などさまざまな場面で重要なツールだが、特に環境モニタリングや農業分析で普及が進んでいるものだ。

Chameleon SWIRの製品画像。Image Credits:Dragonfly Aerospace

他にも「Caiman」や「Komodo」は被写体が放出する光のスペクトル情報を観測できるマルチスペクトラルカメラで、「Mantis」はマルチスペクトラルかつハイパースペクトラル性能※2を備えている。ちなみにカメラの製品名は、「Mantis」以外いずれもヤモリやトカゲといった爬虫類類の名称になっているのが興味深い(社名の由来は、無数の対物レンズを同時に使用することで画像を作成する技術がトンボの複眼を模していること)。