レゴランド・ジャパン・リゾート(名古屋)で大人の入場者がスタッフから子ども用チケットで入場したと疑いをかけられ、寒空の下で40分以上も立ったまま待たされ、スタッフの手違いだと判明したものの謝罪の言葉はなく、入場者が「詐欺師扱いされた」とX(旧Twitter)上に投稿。運営元のレゴランド・ジャパンの本多良行社長はこの入場者に謝罪のDM(ダイレクトメッセージ)を送付したものの、本多社長はX上で「申し訳ないですが、私も自身をクリアにする必要があり、憶測を起こしたくないので私が送ったDMの内容を開示させてください」とポストした上で入場者とのDMのやりとりを一方的に開示。この行動やDMの内容に批判が寄せられる事態に発展している。ちなみに本多社長はこのポストを削除したが、入場者は「送られてきたDMが高圧的だとは感じました」「DMの内容により、私は話もしたくないと感じましたのでこれ以上の進展は無いと思います」とX上にポストしている。レゴランドの対応は何が問題だったのか。専門家の見解を交え追ってみたい。

 玩具「レゴ・ブロック」をさまざまな角度から体験できるレゴランドは2017年に開業。「子どもたちが積極的に参加できるインタラクティブな冒険アトラクションやワークショップを多彩に展開」(公式HPより)しており、開業から約半年で来場者数100万人を突破して以降、来場者数を公表していないが、22年には開業以来3番目に多い来場者数を達成するなど、一定の集客力を維持している。入場料は「レゴランド・ジャパン」のみの場合、「1DAYパスポート」は大人4500円~・子ども3300円~の変動制であり、たとえば土曜日にあたる1月20日は大人7100円・子ども4600円(ウェブ価格)となっている。

 今回トラブルに巻き込まれた入場者は、夫と子どもと3人で購入済の年間パスポートで入場したところ、夫がスタッフから子ども用チケットで入場したと疑われ、「差額を払わないと入れない」「前回子供チケットで入場されましたよね」と言われた。さらにスタッフから、夫が年間パスを購入済であることを確認できれば入場できるが調べるのに時間がかかると言われ、長時間待たされた上、スタッフ側の手違いだと判明した後も謝罪も説明もされず、子どもの年間パスの登録と夫の登録内容の変更を行うと告げられたという。この入場者はX上に「レゴランド側は『お客様が間違っている』と言う姿勢を変えなかった」とポストし憤慨した様子をみせている。

経営トップの自己保身

 このアクシデントを受け、レゴランド・ジャパンの本多社長は当該入場者にDMで謝罪文を送付。さらに本多社長はX上に前述のコメントをポストしたうえで入場者とのDMのやりとりの内容を一方的に公開。その行為もさることながら、本多社長が送ったDMの内容に対しSNS上で次のような批判が多数寄せられる事態に発展している。

<「自身をクリアにする必要があり」って言ってて自分の保身>

<非を認めたくないニュアンスが出てしまう>

<当事者にとって絶妙に腹の立つ言い回しの連続>

<原因究明を約束しない。再発防止も約束しない>

<上から目線>

 ちなみにDMを受け取った入場者も「送られてきたDMが高圧的だとは感じました」とポストしているが、問題となっている本多社長のDMには次のような内容が書かれている。

「この度は問題提起、ありがとうございます」

「我々の対応が悪かったと思います」

「取り急ぎ、まずは私から謝罪させていただきました」

「追加になってしまいますが、レゴランドの99%のスタッフは、お子様、ご家族、ゲストへの接客を心から生き甲斐にしている、いいスタッフです」

 企業のブランディング・マーケティング支援を手掛ける企業の管理職はいう。

「なぜ『素直な謝罪』になっていないのかが疑問。迷惑を被ったお客が『高圧的』だと感じるDMを、企業トップ自ら送ってしまうというのは重大なミスだが、『自身をクリアにする必要がある』という文言からも、トラブル対応より自身の保身を優先する姿勢がみえている点は最も問題。トラブルへの対応手順・方法の失敗というのはどうしても起きてしまうものだが、これは経営者としての資質にかかわる点という意味で根が深い。

 また、もし仮にお客側の不正が疑われた場面でも、お客を長時間も屋外に立たせたままで確認作業を行うという初動対応は不適切。『確認した結果、お客が不正を行っていなかった』という展開も想定されるため、明らかにクロだと判明するまでは丁重に対応するというのがセオリー。スタッフ側のミスだと判明しても説明も謝罪もしなかったというのは論外だが、全体的にみて、レゴランドには『安易に客に謝るということを良しとしない』という不文律が存在するようにも感じる。それはそれで企業の危機管理という意味ではある面で有効なケースもあり、かつては外資系企業ではその傾向が強いとされていたが、経営陣にも現場にも接客サービスの基本が欠けていると世間から受け取られても仕方がない事案といえる」