海に沈んだ幻の大陸、アトランティスは実はオーストラリア沖にあったのか――。最新の調査でオセアニアの海に沈んだサフル大陸には数百万人の人口を抱え繁栄した文明が存在していたことが報告されている。
■2万年前のサフル大陸に640万人が住んでいた
古代ギリシアの哲学者プラトンが言及していた大西洋の中央に浮かんでいた伝説上の広大な陸地であるアトランティスだが、目を南半球に向けてみればかつて現在のニューギニア、オーストラリア、タスマニア島などを陸続きにしていたサフル大陸が実在していた。
今から約2万年前まで広大な陸地を誇っていたサフル大陸だが、最終氷河期が終わりを迎えるに従い、海水面の上昇で徐々に陸地が水没していき、1万4000年ほど前からは大陸とは呼べない地形となって今日に至っている。
これまでの研究ではサフル大陸は居住にはあまり適しておらず人が寄り付かない不毛地帯だったと考えられていたのだが、新たな研究では調査によってかつてこの地で暮らしていた人々の豊かな暮らしぶりを窺える痕跡が多数見つかったことが報告されている。

豪グリフィス大学をはじめとする合同研究チームが2023年12月に「Quaternary Science Reviews」で発表した研究では、これまでサフル大陸は住みにくい土地だと以前考えられていたが、研究者らは先住民族が一時的にそこに住んでいた可能性があることを示す考古学的証拠を発見したことを報じている。
砂漠地帯と考えられていた場所に、実際には湖、川、群島、広大な内海があった可能性があることが、最新の調査で判明し、大陸棚の海底では石器も発見されており、先住民族がある時点で定住していたことが示されることになった。
集落の規模は不明だが、シミュレーションの結果、沈んだ集落には5万人から50万人が生活できた可能性があることが明らかになったのだ。
このモデルを大陸全域にまで適用させてみたところ、サフル大陸の人口はピーク時には640万人にも達していたことが導き出されたのである。
人口のピークは大陸棚全体が乾燥した陸地だった約2万年前の最終氷河期の最盛期に起こった可能性が最も高いという。
しかし氷河期が終わりを迎え海面が上昇すると、人々は撤退を余儀なくされたのである。
ちなみに西オーストラリア州のキンバリーとアーネム地域で発見された新たなロックアートの類似性によってこの地域が陸続きであってことが証明されている。

また海面上昇は、先住民族の人々によって1万年にわたって語り継がれてきた口述の歴史にも残されているということだ。
研究者らは新たに深められた洞察によって先住民族のより詳細な調査が必要となり、地球の地形の変化についてさらに多くの事実が明らかになることが期待されている。