1月15日、ゆうちょ銀行は預入期間5年の定期預金の金利を0.002%から0.070%へ、一気に35倍も引き上げた。同行が定期預金の金利を引き上げたのは2007年6月以来である。なぜ、このタイミングで引き上げたのだろうか。

「日本銀行の金融政策修正を受け、長期金利が上昇していることなどを踏まえた措置だろう」

 そう読み解くのは横浜FP事務所代表でCFP・1級ファイナンシャル・プランニング技能士の平野雅章氏である。日銀の金融政策修正を振り返っておきたい。平野氏によると、金融政策の修正は2016年9月にさかのぼる。日銀が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入し、長期金利と短期金利の操作で実質金利低下の効果を追求するイールドカーブ・コントロールを実施。短期金利は日銀当座預金のうちの政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用して、長期金利については長期国債の買入れを行い、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう設定した。

 さらに22年12月には金融政策決定会合で、長期金利の変動幅を従来の「プラスマイナス0.25%程度」から「同0.5%程度」に拡大する。23年4月に日銀総裁が黒田東彦氏から植田和男氏に交代して以降は、7月に長期金利の変動幅は「プラスマイナス0.5%程度」を目途としながらも、より柔軟に運用する方針が示された。続いて10月には長期金利の目標を引き続きゼロ%程度としつつ、上限の目途を 1.0%に変更して、日本国債10年の金利は大きく上昇したのである。

 これに銀行はどう反応したのだろうか。平野氏は説明する。

「三菱UFJ銀行は23年11月に10年定期の金利を0.002%から0.2%に、5・6年定期の金利を0.002%から0.07%へと大幅に引き上げることを発表し、他行も追随した。24年1月15日現在、5年定期の金利を三井住友信託銀行とみずほ銀行は0.075%、三井住友銀行とりそな銀行は0.070%に引き上げている。ゆうちょ銀行も横並びを意識したのではないだろうか」

資産運用の手段としては魅力的とはいえない

 0.002%から0.07%への変更はじつに35倍という大幅な引き上げだが、金利0.07%の定期預金というのは、そもそも運用手段として魅力的といえるのだろうか。平野氏は「結論としては魅力的とはいえない。同じ元本保証型の商品でも、より高金利な金融商品は少なくない」と指摘して、元本保証型商品の例を挙げる。

 例えば個人向け国債の固定5年(募集期間:令和6年1月12日~31日)は金利0.18%、変動10年(募集期間:令和6年1月12日~31日)は金利0.40%である。インターネット専用定期預金は、商工中金の3年定期が0.40%(3月29日までのキャンペーン)、オリックス銀行の5年定期が0.40%、auじぶん銀行の1年定期が0.35%(1月31日までのキャンペーン)。35倍に引き上げたとはいえ、0.07%では、インターネット専用定期預金の金利には遠く及ばない。