所得控除 の中には、生命保険料を支払うことによって最大12万円の控除が受けられる「生命保険料控除」がある。
控除を受けるにあたって、申告の際にはどのような書類を書けばよいのだろうか。この記事では生命保険控除を行うための書類の書き方について解説する。
生命保険料の控除申告のQ&A
Q 生命保険料控除とはどのようなもの?
その年のうちに生命保険料の支払いを行った場合、決まった計算式に応じた金額が控除されるものである。
Q 生命保険料控除はいくら行われるのか?
生命保険料控除は最大12万円だ。控除は生命保険の種類(3種類ある)ごとに行われ、各種類4万円または5万円の控除が行われる。
Q 生命保険料控除はどうやって行うの?
生命保険控除は年末調整や確定申告時に行う。
生命保険料控除の全体像
・生命保険料控除について
生命保険料控除は生命保険料として支払った金銭に対して行われる。生命保険料を3種類に分類して種類ごとに控除額を計算し、その合計額で生命保険料控除額を求める。
・生命保険は5つに分けられ3つに集約される
まず、保険をいつ契約したかによって新制度と旧制度に分ける。
契約締結が2011年12月31日までの場合は旧制度、2012年1月1日以降の場合は新制度となり、控除額や保証の範囲などが違う。
さらに、保険の種類によって一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料に分ける。なお、介護医療保険料は新制度のみなので、5つに分類される。
生命保険料控除の計算は、まず5つの保険料について各々の控除額を計算する。次に同じ種類の新制度と旧制度とで控除額を足し、種類ごとの控除額を計算する。最後に全種類の控除額を足して合計額を求める。
・控除額の最大は12万円、種類ごとでは4~5万円
種類ごとの控除額は、旧制度だけの場合は最大で5万円、新制度のみまたは新制度と旧制度を合わせた場合は最大で4万円である。
単純に合計した場合、最大13万円の控除となるが、制度上は12万円までで、超える分は切り捨てられる。
情報収集
書類を作成するにあたり、必要な証明書の見方、必要な情報の取得方法について解説する。
・生命保険控除の書類は書き間違いが多い
生命保険控除に関する書類は、誤りが多い。原因として挙げられるのが、記載すべき事項を記載していない、新制度か旧制度か適当に選択している、転記すべき数字が誤っている、控除額の計算を誤っている、などである。
このような間違いを防ぐために、どのように保険料控除証明書から情報を抜き出せばよいのだろうか。
・保険料控除証明書から何を探し出せばよいのか
書類の作成にあたっては保険料控除証明書が必要となる。記載する際、抜き出す情報は以下のとおりだ。
1.生命保険を契約した人の氏名
あて名の形式で書かれているケースもある。
2.保険の新制度、旧制度
3.1枚の保険料支払証明書では、新制度、旧制度のどちらか片方しか書かれていない。
これを間違えると保険料控除の計算自体を間違えてしまうので、どこかに書かれている保険の新制度、旧制度を見つけよう。
4.保険料の金額
保険料の金額は、保険会社によってはすでに支払った金額と12月末までに支払う予定の金額の2種類が書かれていることがある。この場合、書くべき金額は12月までに支払う予定の金額である。なお、配当金などで戻ってきた金額がある場合、その金額を控除した金額を記入する。
5.保険料の種類
一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料のいずれかである。
この三者は区別をつけ、各々で集計する必要がある。
6.保険会社の名前
7.保険などの種類(確定申告時) 保険の種類を記載する。例として「定期生命保険」「がん保険」などがある。
・関係のない項目に注意!
保険料支払証明書の中には、全く関係のない項目が記載されているケースもある。
代表的な例をいくつか挙げよう。まず、これまで支払った保険料の金額がある。これは単に実際に支払った金額を表示しているにすぎず、年末調整時に記載すべき数字ではない。適用対象外となる保険料とともに記載されているため、書類に記入してしまうケースもある。
年末調整の書類の書き方(一般生命保険)
生命保険料控除を受けるための方法の一つが年末調整だ。ここからは年末調整における書類の書き方について説明する。
まず、一般生命保険料の記載方法について説明する。
・記載項目
一般の生命保険料の記載項目は以上のようになっており、内容は以下のとおりだ。
1.保険会社等の名称
保険金を支払った会社の名称を記入する。
2.保険などの種類
「定期生命保険」など契約した保険の種類を記入する。
3.保険期間又は年金支払期間
保険期間を記入する。
4.保険等の契約者の氏名
保険の契約者名を記入する。
5.保険金の受取人 名を記入する。
6.新・旧の区分
契約が新制度か旧制度かについて当てはまるほうに丸をつける。
7.あなたが本年中に支払った保険料等の金額
実際に支払った保険金の額を記載する。なお、配当金があった場合はそれを控除する。
・金額の集計の仕方
すべての一般生命保険料について記載したら、集計をして、保険料控除の金額を求める。
まず、保険料(「あなたが本年中に支払った保険料等の金額」の欄に記載した金額)について、新制度(新保険料等)と旧制度(旧保険料等)に分けて集計し、それぞれ左のA欄とB欄に記載する。
新制度、旧制度それぞれの金額について所得控除額を計算する。まず、新制度(A欄の金額)について、下表の計算式によって控除額を計算して、①の欄に記載する。
支払保険料等の額 | 所得控除額 |
2万円以下 | 支払保険料等の全額 |
2万円超 4万円以下 | 支払保険料等×1/2+1万円 |
4万円超 8万円以下 | 支払保険料等×1/4+2万円 |
8万円超 | 一律4万円 |
旧制度(B欄の金額)について下表の計算式によって控除額を計算して、②の欄に記入する。
支払保険料等の額 | 所得控除額 |
2万5000円以下 | 支払保険料等の全額 |
2万5000円超 5万円以下 | 支払保険料等×1/2+1万2500円 |
5万円超 10万円以下 | 支払保険料等×1/4+2万5000円 |
10万円超 | 一律5万円 |
①と②の金額を足して③に記載する。ただし、その金額が4万円を超えたときは4万円と記載する。
最後に②と③の金額のうち、高いほうの金額をイの欄に記載する。