遠藤「みんな私の特長を分かっている」
栗島の的確なポジショニングによって持ち味を発揮できた遠藤も、試合後に筆者の取材に応じている。筆者が実感した通り、本人も快適にプレーできていたようだ。
ー栗島選手がセンターバックとサイドバックの間へ降りてきてくれたので、遠藤選手が高い位置でプレーできましたね。この2人の関係性がとても良いように感じましたが、いかがでしたか。
「それは本当にその通りですね。(栗島の立ち位置で)相手の左ウイングバック北川選手と、インサイドハーフ成宮選手も困っていて、だからこそ前半から縦に仕掛けることができました。これがポジティブな点でしたね」
ー低い位置で配球役を担うよりも、そちら(高い位置)のほうが遠藤選手の突破力や推進力は活きますよね。
「多分みんなも私の特長を分かっていると思います。ビルドアップが凄く苦手というわけではないんですけど、私がパサー(配球役)になるよりかは人(チームメイト)に活かしてもらうほうが、チームとしても良い。そこの共通意識ができていたと思います」
INACの攻撃を牽引したのは
INACは栗島のポジショニングに手を焼き同点ゴールを奪われたものの、守屋と北川の両ウイングバックが攻撃を牽引。この2人の立ち位置も概ね的確だった。
この試合では守屋と北川が浦和サイドバックとサイドハーフの間へ立ち、GK山下や味方3バックからのパスを引き出そうとする場面がちらほら。浦和としてはサイドバックとサイドハーフのどちらが北川や守屋へ寄せるのか、難しい判断を常に迫られていた。
日本女子代表の一員として出場したパリ五輪アジア最終予選(2月28日開催の朝鮮民主主義人民共和国女子代表戦)でも、左ウイングバックを務めた北川はこの立ち位置をとって自軍の攻撃を牽引している。相手チームにとって嫌な立ち位置を会得した模様だ。
J・フェロン監督「距離感は悪かった」
両ウイングバックの立ち位置が良かった場面もあった一方で、守屋と北川が相手最終ラインの背後を狙ったときにINACのビルドアップは停滞。基本布陣[3-1-4-2]の両ウイングバックと2インサイドハーフがともに攻め上がり、[3-1-6]のような陣形に時々なっていた。
INACのアンカー(中盤の底)、DF土光真代へのパスコースは浦和陣営が懸命に塞いだため、アウェイチームとしては相手最終ライン背後か、2トップへの強引なパスしか選択肢が無い状況に。竹重、三宅史織、井手ひなたの3DF(3バック)へのプレスがそれほど強くなかったわりには、INACのビルドアップに多彩さは感じられなかった。
INACを率いるジョルディ・フェロン監督はこの試合終了後の会見で、筆者の質問に回答。3バックと前線の距離感に言及している。
ーINACの前半の攻撃についてお伺いします。アンカー土光選手へのパスコースを浦和に塞がれたとき、ビルドアップに苦労しているように見えました。インサイドハーフが(味方最終ライン付近へ)降りてワンタッチでボールを叩く場面があれば、INACの攻撃が機能したと思います。監督から見て最終ラインと前線の距離感はいかがでしたか。
「確かに距離感が悪かったように見えました。相手がロングボールを蹴ってくるのではないか。この想定があり、ヘディングで競り勝てるよう空中戦に強い真代をボランチ(アンカー)に置きましたので、前半は(DF松原)優菜を起用しませんでした。今までは優菜がこのポジションでボールを繋ぐ役割を担ってくれています。だからこそ後半開始前に(ベンチスタートだった)彼女を投入しました」