ZXシリーズと一線を画するライダーマン的マシン「ZX-10」

「最速なのに売れない」という現実に驚いたカワサキは、懲りずにさらなる最速を作り出します。それが1988年に発売された「ZX-10」です。現行のZX-10Rとは直系ではなく、仮面ライダーとライダーマンみたいな関係です。900Rから1000RXに受け継がれたエンジンが改良された直系バイクです。最高出力は、1000RXよりも12ps向上して137psを発揮。スピードメーターには300㎞/hの数字が刻まれました。

完全新設計のアルミ製のツインチューブや、エンジンの軽量化により乾燥重量は222kgと、最軽量記録を達成。スピードはノーマルで270km/hをオーバー。0-400mも10秒50を誇り、カワサキの技術が凝縮されていました。今度こそフラッグシップとして輝く予定でしたが…やはりダメでした。翌年にZZRにバトンを渡して姿を消すのでした。

ちなみに、近年のカワサキ車にやたらと付けられている「ZX」は、もとは形式名称でした。一番最初は空冷のGPzシリーズで、1000RXはZX1000A1、ZX-10はZX1000B1です。

もしも「900Rの後継車」という位置づけでなかったら?

巷に溢れている900Rよりも、「1000RX&ZX-10が好き」という人は一定数います。その後、1000RX&ZX-10とコンセプトが変わらないZZR1100がヒットしたのは、900Rの後継車という呪縛から解き離れたからではないでしょうか。当時のカワサキらしさが味わい深いモデルです。ちなみに900Rカラーのニンジャ1000SXの登場は「900R復活の前哨」というウワサが流れていますが、1000RX&ZX-10復活は…ないだろうなぁ。