Q遺言書をちゃんと用意しておけば、自分の思い通りに相続が進みますか?

(写真=naka / stock.adobe.com、ZUU online libraryより引用)

正式な遺言書であることが大前提。遺留分にも注意を!

●「自筆証書遺言」は手軽に作成できるが、不備が発生しがち

相続の際に有効となる遺言書には、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」という3つの種類があります。

まず「自筆証書遺言」とは、財産を遺す人(被相続人)がその本文・氏名・日付のすべてを自書で記して作成するものです。

自分で書けるという点は手軽ですし、コストもかかりません。2019年から財産目録に限っては、自筆ではなくパソコンで作成したものでも認められるようになりましたし、2020年7月から作成した自筆証書遺言を法務局で保管する制度も始まっています。

気が変わったらすぐに書き直せるのもメリットですが、難点は不備が発生しがちで、その内容が有効と認められないケースが出てくることです。

また、その存在を知った人間によって改ざんされるリスクがありますし、逆にその存在を遺族が知らないまま相続の手続きが進められる可能性も考えられるでしょう。

そこで、これらを防ぐ意味で先述の法務局での保管制度が導入されました。遺言者の住所地・本籍地・遺言者が所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所で保管の申請手続き(要事前予約)を行うと、「自筆証書遺言」を預かってもらえ、代わりに保管証が発行されます。

こうしておけば紛失・改ざんの心配がありませんし、相続が発生した際に、遺族はその保管証を手掛かりに「自筆証書遺言」の存在を知り、その内容を確認できます。なお、保管の申請時には遺言書と申請書(法務局のホームページでダウンロード可能)に加えて、本籍の記載のある住民票の写し等、本人確認書類、手数料(遺言書1通につき3900円の収入印紙を納付用紙に貼付)が必要です。

●「公正証書遺言」はコストと手間がかかるも、効力が明確

一方、公証役場の公証人が作成に関与し、公正証書として保管されるのが「公正証書遺言」です。まず、財産を遺す人は相続に関する自分の意向を公証人に伝えます。すると、公証人はその内容をもとに公正証書としての遺言を作成します。無効となる恐れがまず考えられないことは一番のメリットで、公証役場で厳格に保管されるため、改ざんなどのリスクも発生しません。反面、そのデメリットは手間と時間がかかることと、数万円の作成費用がかかることです。