住民税の寡婦控除
住民税の寡婦控除なら控除額はどうなるのだろうか。そして、ひとり親控除の創設でどう変わるのだろうか。
●寡婦控除改正前
寡婦の場合、死別であっても離婚であっても生計を一にする子がいるならば、合計所得が500万円以下なら30万円の個人住民税の控除が受けられる。
死別であって合計所得500万円以下で子供以外の扶養親族がいる場合、合計所得500万円超で子供か子供以外の扶養親族がいる場合、離婚していて合計所得500万円以下で子供以外の扶養親族がいる場合、離婚していて500万円超の合計所得と子供か子供以外の扶養親族がいる場合は26万円の控除となる。 寡夫の場合、死別であっても離婚であっても子供が居て、合計所得が500万円以下なら26万円の控除となっていた。
●ひとり親控除
ひとり親控除の創設で合計所得500万円超なら男女ともに控除は受けられない。
女性は合計所得が500万円以下で子供が居れば、死別であっても、離婚であっても、未婚の母であっても30万円の住民税の控除が受けられる。それ以外は一般の寡婦控除のまま26万円の住民税の控除となる。
男性は26万の控除が30万円に上がったのと、未婚の父も同様に30万円の控除が受けられることとなった。
●支払う税金を試算
所得税率が10%の年収(課税所得195万円~330万円未満)なら、ひとり親控除の創設により、寡夫控除の対象の人は所得税では35万円―27万円=8万円×10%で年間8,000円安くなる。住民税なら0,000円の差額なので、10%と改定すると4,000円安くなる。
未婚の父母は、ひとり親控除の創設により、最大で所得税35万円、住民税30万円で、共に10%の税率として合計65,000円税金が安くなることになる。
寡婦控除改正・ひとり親控除創設による事実婚の扱い
寡婦控除改正とひとり親控除の創設により、未婚の親は控除を受けられる一方で、事実婚は寡婦控除を受けられなくなった。
●事実婚の定義
事実婚は、通常の法律婚と異なり、両者が結婚の意思を有し行動生活をしながら、婚姻届けなどの手続きを踏まない形態のことを言う。
また、厚生労働省の労働白書によると、日本では約98%が婚姻関係で生まれてきた嫡出子であるが、欧米諸国に比べると婚外子の割合が著しく低くなっている。
●住民票への記載
同棲と事実婚は似て非なるものである。
同棲するだけで、住民票の届け出をする人は少ないだろう。事実婚は、住民票に反映させることで事実婚という一つの証明になる。
転出届の世帯主との続き柄に妻(未届)夫(未届)と記載されて、それが住民票の証明となる。
●受けられるメリットデメリット
事実婚は法律婚と同様に、社会保険においては扶養家族として扱われる。
年収などの法律婚の条件を同様に満たしていれば、厚生年金ならばパートナーの年収が130万円未満ならば、第3号被保険者として加入出来て保険料を免除できる。
健康保険も扶養家族に入ることができる。
しかし、事実婚では通常受けられる配偶者控除や配偶者特別控除などの控除は認められていない。相続権もなく、生命保険の受取人になることも原則できない。
寡婦控除で事実婚が認められなくなったことはデメリットが一つ増えたことにもなる。
寡婦控除の対象は子供だけではない
ひとり親控除の創設により、子ども以外の扶養親族が寡婦控除を受けられなくなるわけではない。年老いた親を扶養控除にすることができる。
●老人扶養控除
その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の納税者か配偶者の父母・祖父母で、合計所得が48万円以下で生計を一にしているなら老人扶養控除として、控除の対象となる。
同居老親と同居以外の老親で控除額が違う。
同居している場合は、58万円の控除を受けることができる。同居していない場合は48万円の控除となる。
祖父母が病気やケガの治療のために長期で入院している場合であっても、同居と認められる。
ただし、老人ホームに入居している場合などは同居とは認められない。
●寡婦控除との併用
一般の寡婦としての寡婦控除と扶養控除(老人扶養控除含む)を併用することができる。
気をつけたい適用漏れ
年末調整で寡婦控除・ひとり親控除は控除されるが、申請しなければ適用されない。
自ら、勤務先に扶養控除等(異動)申告書に該当する旨を記載して、提出しなければならない。
もし、忘れていて年末調整で受けられなかったならば、確定申告で申請することもできる。
まとめ
令和2年度の税制改正から寡婦控除が改正され、ひとり親控除の創設に伴い、これまで控除の対象でなかった未婚の父母が控除の対象となり、一方で事実婚は対象外となった。
対象になったことも対象から外れたことを教えてくれる人も少ないだろうし、勤務先で年末調整の際に、こちらから言わなくても勝手にやってくれることもないだろう。
まず、対象かもしれないと思ったら、近くの税理士や税務署に問い合わせてみるといいだろう。
文・ZUU online編集部、編集者・中村 優之介/提供元・ZUU online
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