近年、アフリカのEコマース(EC)市場は拡大傾向にある。アフリカ地域のなかでも南アフリカは、アフリカ2位のEC市場だ。2020年の市場規模は37億ドルと推計され、2025年までに市場規模が63億ドルになると予測されている。

こうした成長の背景には、電子ウォレットをはじめとする新しいデジタル決済方法の登場がある。Statistaの調査によると、南アフリカにおける電子商取引の普及率は約49%で、2028年までに60%に増加すると予測されている。

オンラインによる高速で安全な支払いへの需要が高まるなか、Stitchは南アフリカの複数の銀行との直接統合にもとづいて構築された、信頼性の高いAPIを提供する決済プロバイダーとして登場。企業が支払いの受領と送金、財務業務の合理化、顧客満足を実現できるよう支援している。

フィンテック企業が直面するコンプラ・身元確認の問題

南アフリカのケープタウンに拠点を置くStitchは、Kiaan Pillay氏、Priyen Pillay氏ら兄弟と、Natalie Cuthbert氏によって2019年に設立されたフィンテック企業。

CEOのKiaan Pillay氏は南アフリカの保険APIプラットフォーマーであるRootや、本人確認のためのAPIソリューションを提供するSmile ID(旧:Smile Identity)で務めた経歴を持つ。

同氏はアフリカ中のフィンテック企業と協力するなかで、彼らがコンプライアンスや身元確認をめぐるインフラ問題に直面していることを発見。その後、Priyen Pillay氏とNatalie Cuthbert氏とともにStitchを設立し、秘密裏に活動を開始した。

2021年には400万ドルを調達し、ステルス状態から浮上。同年時点でアフリカのAPIフィンテックスタートアップが調達したラウンドとしては最大規模となる。

アプリで金融のワンストップ化を実現

Image Credits:Stitch

StitchのテクノロジーはAPIを中心に構成されており、企業とユーザーが銀行口座に安全に接続することができる。

企業側は取引データの読み取り、個人への支払い、アプリケーションを通して個人財務管理ツールへのアクセスが可能だ。一方、ユーザーは取引履歴や残高を共有することができ、本人確認、支払いなど全てをワンストップ化できるメリットがある。

AI駆動エンジンを活用し、詐欺を防止

Image Credits:Stitch

セキュリティ面も優れており、Stitchのサービスでは強力なAI駆動エンジンを活用して、詐欺行為者の侵入を阻止することが可能だ。

「Stitch Shield」と呼ばれる同機能では、クライアント定義された一連の基準またはルールにもとづいて不正行為の可能性のある取引を検出。ユーザーのデバイスを自動的にブロックしたり、さらなる調査のために資金の決済を遅らせたりできる。

そのほか、Stitchでは暗号化を使用して厳格なデータ管理と保護を実践し、内部テストを通じてこれらのシステムを定期的に監視している。