地元ショップと初期ユーザーからヒントを得たビジネスモデル
Meesho は名門インド工科大学の卒業生Vidit Atrey氏とSanjeev Bharnwal氏によって、インドのバンガロールで2015年に設立された。創業者2人が初めに取り組んだのは、地元に特化したファッション販売・配達アプリ「Fashnear」だった。特定地域の実店舗にアプリ登録してもらい、消費者がアプリで選んだ品物を配達するというシステムだ。しかし、顧客の関心は地元のショップ云々ではなくセール品か否かであったため、このビジネスモデルは機能しなかった。

創業者のVidit Atrey氏とSanjeev Bharnwal氏2人Image Credits:Meesho
それでも、この期間に地元小売業者の生の声とリアルな運営状況を目の当たりにした経験から、のちのMeeshoとなるソーシャルコマースの閃きを得ることになる。バンガロールのコラマンガラ地区のあるショップオーナーが、すでにWhatsAppとFacebookでビジネスを展開していたのだ。新着アイテムの写真をアップして客から注文が入ると、従業員がそれを配達して代金を回収してくると言う。このシンプルかつパワフルなビジネスモデルに創業者2人は大いに感銘を受けた。そして新たに始めたのがMeeshoのプロトタイプ(旧名称Meri Shop)である。

Meeshoの経営陣紹介ページはなぜかアベンジャーズ風になっていてお茶目。Image Credits:Meesho

プロフィールのRead Moreをクリックするとヒーローに変身する前の姿が表示される。Image Credits:Meesho
FacebookアカウントでMeeshoアプリにログインすると、Facebook上のショップ・商品情報がすべてMeeshoにも複製され、ユーザー専用のウェブページが作成される仕組みだった。さらにアプリ上で自動在庫補充や在庫管理まで支援。マーケティングが功を奏して、ローンチから半年で1万軒のストア登録を達成した。このとき、彼らをさらに先へと導いたのが女性の「リセラー」たちだ。
初期のアプリ登録ストアのほとんどが、一般女性が自宅で運営するものだった。こうした女性オーナーは、「リセラー」を自称。在庫を持たない状態で毎日商品情報を更新、注文を受けてから品物を仕入れて販売するという卸売業を行っていた。創業者たちはそこに商機を見出し、サプライヤーとリセラーの架け橋となるプラットフォームを目指すことに。こうしてMeeshoは、資金がなくともスマホ1台あれば誰でもオンラインビジネスを展開し生計を立てられる「ソーシャルコマース」アプリとなったのだ。

Meeshoのサプライヤーは当初から女性が多かった。2021年には女性起業家数900万人に到達。Image Credits:Meesho
2021年12月には、同社プラットフォーム上でビジネスを運営する女性起業家の数が 900万人に到達したことを発表。女性差別に苦しむインドの女性たちにとって、経済的自立を獲得するうえで貴重な手段となっている。また、2023年3月には国際女性デーに先立ち「#NoBiasInBusiness」という取り組みを立ち上げ、すべてのビジネスウーマンに対する平等な尊重と評価を求めた。
インドネシアのEコマース大手Tokopediaがビジネスの民主化を果たしたように、Meeshoも企業ミッションを「インターネットコマースの民主化」としている。同社が提供するプラットフォームは単なるビジネスツールにとどまらず、社会的な変化を牽引する力を持っているのだ。CEO自らがMeesho文化の構築と形成を率いる実動リーダーとして、従業員中心文化を熱心に推進してきた。従業員が「創業者マインド」を抱ける環境を作ることで事業拡大を実現してきたというMeesho。インド経済、インドのSコマースビジネスとともに今後も成長が続きそうだ。
(文・Techable編集部)