生理用品はナプキン派が9割、避妊方法は不確実性の高いコンドームが半数以上と、情報不足ゆえにリプロダクティブヘルスの選択肢が限られている日本。「月経は毎月あるのが普通」で「生理痛は我慢するもの」といった思い込みも根強く、月経(排卵)をコントロールしてQOLを改善するという考えも浸透していない。
日本はピルの服用率が3%に満たない「ピル後進国」であり、IUD(Intrauterine Device・子宮内避妊用具)やIUS(Intrauterine System・子宮内避妊システム)にいたっては使用率0.3%という低さである。そんな日本で、イスラエル発のIUDならぬIUB(Intrauterine Ball)の名を冠する革新的デバイス「IUB Ballerine」が来年2025年から展開される予定だ。

左からBarelline、SEAD、PRIMAのIUB製品。これまでスティック状だった子宮内避妊具を球状にしてサイズダウン。Image Credits:OCON Therapeutics
次世代スマートIUDはボール状の“IUB”
IUBの「B」は「ボール」のこと。これまでスティック状だったIUDを球状にすることで3分の1にまでサイズダウンし、使用時の身体的負担を大きく軽減したものだ。OCON社CEOであるKeren Leshem氏は、実演を織り交ぜながら説明してくれた。
「IUBシリーズは副作用のある経口避妊薬からの脱却だけでなく、避妊手術や子宮筋腫、子宮内膜症のための侵襲的な外科手術からの脱却をも目指したものです。ステントを使って薬剤を子宮に直接送り込むという、まったく新しいプラットフォームを設計しました。デバイス本体にはそれぞれ異なる種類の薬品が不可されていて、Barellineの場合は銅によって避妊します。SEADとPRIMAには別な薬品が使用されています」。既存のIUD同様、ホルモンではなく銅イオンの作用によって卵子と精子の受精や受精卵の着床を阻害する。Barellineは99%の避妊効果があり、最長で5年間有効とのこと。

Femtech Fes! 2024で出展されたIUBシリーズ、右端が「Barelline」。青いひも状の部分はニチノール製
IUDをスティック状ではなく球状にするという着想は、イスラエル出身の医学博士Ilan Baram氏が2008年に医療の現場で得たものだ。「自分のクリニックで女性たちの診療にあたっていた時に思い付いたものです。クリニックに通う患者さんたちから、IUDを使用すると痛いという苦情が絶えなかったんですね。何が問題なのか超音波で調べても、デバイスが子宮内にあることしか分かりません」標準的なT字型デバイスは子宮内で移動・回転するため、超音波では検出が難しいという。
「そこで内視鏡で確認してみると、デバイスの位置異常が起こっていたんです。これが原因で子宮が収縮していたので、激しく痛むのも当然です。それで医師はこう考えました。体内の“腔”である子宮は三次元空間なのに、二次元的なスティックがフィットするはずがない。ボールが必要なんだと」。しかし、子宮の入り口は3~4ミリほどと非常に狭い。どうすれば球状のデバイスを通過させられるのか。そこで到達したのが、素材にニチノールを採用するという設計だった。

右がIUB Barellineで左のT字型をしたものが従来の子宮内デバイス