2月23日の明治安田J1リーグ開幕節で鹿島アントラーズと対戦し、0-3で敗れた名古屋グランパス。開幕戦では9年続けて黒星がなく、昨2023シーズンは34試合で36失点と堅守を誇った名古屋の完敗は意外な姿だった。
なぜ3失点を喫し完敗したのだろうか。名古屋のJ1開幕節の内容から、その理由と今後の不安材料を考察する。
経験不足の3バック
開幕戦で長谷川健太監督が選択したフォーメーションは[3-1-4-2]。DFラインには右から、DF野上結貴、アビスパ福岡から加わったDF三國ケネディエブス、ヴァンフォーレ甲府から加わったDF井上詩音が並んだ。
野上は昨季もレギュラーとしてリーグ戦30試合に出場していたが、三國と井上は新加入組。さらに、三國は昨季の出場は途中出場が中心の18試合(496分)で、福岡での出場は同じく3バックの一角ではあったものの、中央でのプレーは不慣れだった。
井上はプロ2年目にして初のJ1の舞台で、昨季プレーした甲府のシステムは4バック。プロの舞台で3バックに慣れていないという不安材料があった。そして経験不足、適材適所と言い難い起用法の不安は、現実のものとなる。
完敗と言わざるを得ない開幕戦の経緯
開幕戦では試合開始直後こそボールを握った名古屋だったが、19分にセットプレーのこぼれ球を繋がれ先制を許す。名古屋の選手たちはボールウォッチャーになっており、いち早く反応した鹿島のMF仲間隼斗はフリーで先制点を決めることができた。
前半のスコアは0-1。名古屋としては先制こそ許したものの最少失点で試合を折り返し、後半の巻き返しが期待できる状況だった。ところが、後半に向けて組み立てたであろうプランは開始早々に瓦解する。
47分に鹿島が左サイドから放ったクロスは、FWチャヴリッチの頭にピタリ。この瞬間、チャヴリッチには三國と井上の2人が警戒していたが、斜めに動いたクロアチアとセルビアの国籍を持つストライカーに対してマークの受け渡しが上手くいかず失点。集中力高く入ったはずの時間帯に与えた2点目は、明らかに名古屋にダメージを与えた。
さらに62分には、抜け出したチャヴリッチに対応した三國が足を滑らせ、最後はフリーのMF仲間隼斗にこの試合2点目を奪われ万事休す。守備の不安定さはもとより攻撃にも精彩を欠き、1点でも返して次の試合へと繋げることも叶わなかった。
名古屋はボール支配率とパスの本数こそ鹿島を上回ったが、その他のスタッツは下回った。なかでも気になったのはシュート数で、鹿島の16本(枠内5)に対し、名古屋は6本(枠内0)。ボールは持てていても、相手ゴール前まで至る機会が少なかったことが分かる。
これはサッカーにおいて「良い攻撃は良い守備から」とよく言われるように、センターバック陣を筆頭に良い守備ができなかったことが影響している。守備が安定しないため全体の意識が後ろ向きになり、攻撃に移った場面でゴール前まで侵入する名古屋の選手はごく少数に留まった。
また、センターバックの中央に入った三國を筆頭に、パスの選択肢はほぼ近くにいる選手のみ。いわゆる「各駅停車」となり、鹿島の前線の選手たちは容易にパスコースを限定できた。FWキャスパー・ユンカーとFWパトリックという強力な2トップを並べながら、彼らが良い形でボールを持つシーンは極々限られた。