紆余曲折あったニッチ製品を元Bose社員がスタートアップで復活させる
SleepbudsはBose時代からいろいろあった製品だ。2018年に日本で販売開始された初代モデルは、電源周りのトラブルが多発。解決できないまま約1年後の2019年10月に販売終了および購入者への全額返金が発表されるという悲しい結末を迎えた。
翌2020年には音響・電子回路の設計を見直し、ノイズマスキング性能を向上させた後継機「Sleepbuds II」が発売される。熱心なファンを獲得したが、約2年という短期間で他のニッチ製品(Bose Framesなど)とともに販売終了となってしまう。世界中のファンが「Sleepbuds III」を待ち望むなか、BoseではなくOzlo社が後継機を開発したという流れである。
Ozloの創業者3人は全員が元Bose社員で、Sleepbudsの開発に携わっていた張本人たちだ。担当製品が廃版になってしまったので、やりたいことを続けるために大企業を出て起業したのだろうと予想できる。同社の使命は、医薬品の介入やそれに伴う副作用なく充実した睡眠を実現し、目覚めの良さと精神的・肉体的健康を目指すこと。オーディオを通じて、より良い睡眠を実現するための製品開発に情熱を燃やしている。
CEOのN.B. Patil氏は、2000年にファームウェアエンジニアとしてBose社に入社。在職中は初のBluetoothステレオヘッドホンBose Connect AppやBose Framesなど数多くの製品を市場に送り出し、38件以上の特許を取得した。CPOのCharles Taylor氏は、Bose社で新規事業ライセンシングの責任者を務めた人物。複数のソフトウェア製品の開発・発売を成功に導き、コンセプト作りから市場への導入までを監督した。ソフトウェア開発戦略の専門家であると同時に、経験豊富な起業家でもある。
COOのBrian Mulcahey氏は30年以上の経験を持つベテラン経営者。IPO前のスタートアップからフォーチュン100企業まで、世界的なテクノロジー企業で成長と実績を上げてきた。 Bose社の「Bose Health」部門を立ち上げ、睡眠関連事業を拡大成長させた中心人物として睡眠技術の分野での5件を含む多数の特許を取得している。
日本でもBose時代のファンから注目を集めているOzlo Sleepbuds。INDIEGOGOでは現在も3万5千円ほどから購入可能だが、残念ながら配送先はアメリカ・イギリス・オーストラリア・ヨーロッパに限られている。日本を含むアジア圏で入手可能となるのはいつになるのか、今後の展開に期待したい。
(文・根岸志乃)