本稿は、アフリカビジネスパートナーズによる寄稿記事である。同社は、ケニアや南アフリカに現地法人を持ち、アフリカ40か国で新規事業立ち上げやスタートアップ投資に関する支援を提供している。現地のビジネス最前線を知る同社独自の視点から、投資家が注目するべきアフリカのスタートアップトレンドを毎月ピックアップして紹介していく。
第2回となる本号では、アフリカで電動バイクの組み立て生産を行うスタートアップを取り上げる。アフリカを走る多くのバイクは、日本のような私的な利用ではなく、人を運ぶバイクタクシーや、モノを運ぶ宅配便、eコマース配送といった事業目的で使われている。都市、農村を問わずバイクへの需要は高く、仕事がない若者を中心に個人で収入を得られる手段として人気がある。
ところが、昨今の世界的なガソリン価格の高騰により、個人のバイクライダーとして生計を立てる人々の暮らしは厳しさを増している。この解決策として注目を浴びているのが、“電動”バイクだ。
ベナン発のSpiroがアフリカ各国で存在感
ベナンという国がどこにあるかご存じだろうか。アフリカの大国ナイジェリアとコートジボワールの間に挟まれた、日本の約3分の1程度の面積の国だ。この西アフリカの小国ベナンで生まれたスタートアップSpiroが、意外にもアフリカの電動バイク業界で存在感を発揮している。

Image Credits:Spiro
Spiroの各国へ向けた販路開拓において、同社が各地のファイナンス企業との協業を進めていることも注目に値する。三菱商事の出資先でありアフリカ11か国で太陽光発電キットなどの割賦販売を行う英Bboxxや、ケニアのバイク向け融資Watu CreditやMogoとの協業により、販路を着実に拡大している。
さらに政府との提携にも積極的だ。ケニア政府とは、前述の工場設立やバッテリー交換ステーションの追加も含め、電動バイクを全国に普及させるための提携を結んでいる。現地で若者の就職難が深刻である背景から、バイクライダーの生活の安定は政府としても喫緊の課題だ。2023年にケニア政府は、国内を走る電動バイクの台数を今後2年間で30%増やし、50万台まで引き上げるという目標を発表している。
一方、ウガンダ政府とも同様の提携を結んでいる。ウガンダではケニア以上にバイクが主要な交通手段となっている。今後ウガンダには2億ドルを投じる予定で、その一部を費やし、首都カンパラに電動バイクの組み立て工場を建設する計画である。
西アフリカのベナン生まれのスタートアップが、近隣国のみならず東アフリカに飛び出し、政府や大手企業と協業し存在感を発揮している。