■煮え切らぬ結末
グリーンマンとして精神病棟に収容されたデサルヴォと同房になった殺人犯ジョージ・ナッサーは、ある日の会話で彼がボストン・ストラングラーである可能性に気づいたという。自身の弁護士に相談を持ちかけ、その弁護士がデサルヴォに面会して確認したところ、彼はあっさりと自分がボストン・ストラングラーであることを認めた。
警察の取り調べで、デサルヴォは犯人しか知りえない事実を次々と話した。さらに、警察が掴んでいなかった事件までも自白した。1962年6月28日にメアリー・マレン(85)、1963年3月9日にメアリー・ブラウン(69)を襲ったと告白したのである。それまで前者の事件は心臓発作による病死、後者は刺殺されていたため、ボストン・ストラングラーの被害者とみなされていなかったのである。
だが、警察はデサルヴォの自白以外の物証を見つけることができなかった。犯行現場には指紋が残されておらず、当時はまだDNA鑑定もない時代である。日本なら自白のみでも間違いなく有罪であろうが、アメリカではそうはいかない。
検察はデサルヴォに司法取引を持ちかけた。グリーンマンとしての強姦罪を認めて終身刑を受け入れるなら、ボストン・ストラングラーとしては裁判にかけないというものである。かくして、正式に裁判も行われないまま、ボストン・ストラングラー事件は終結を迎えたのである。