(本記事は、横山光昭氏の著書『となりの家のざんねんなお金の話』=あさ出版、2019年4月28日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

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「子どもには苦労はさせたくない」といって教育費破綻!

生活費を削って教育費に充てる?

家計相談に来る人には、「生活費を削ってでも教育にはお金をかけたい」と語る人たちが少なくありません。聞いてみると、幼稚園のころから英語教室に通わせたり、学習塾からピアノ、バレエに至るまで6つも習い事をさせたりしている家庭まであり、驚くばかりです。

確かに、子どもには無限の可能性があり、育てて才能を開花させてあげたいという親心はわからないでもありません。またいい学校に通わせ、いい会社に就職させてあげれば将来苦労せずにすむといった思いもあるでしょう。

しかし、それも限度というものがあります。生活費まで削って子どもの教育費に充てれば、家計がどうなるかは火を見るより明らか。でも、子どものこととなると、周りが見えなくなる人たちは少なくないのです。

田村さん(43歳/男性)の場合……
「子どもには苦労させたくないから、塾や習い事には行かせてあげたい」

43歳で会社員の田村さんには、小学校4年生の子どもがいます。普段から、「自分はいい大学を卒業していないから出世できずに苦労した」と強く思っており、子どもには同じ思いをさせたくない」と考えていました。

そこで、3歳の頃から英語教室に通わせたほか、今では塾にも行かせています。しかも、その塾は、バスと電車を乗り継いで通う遠い所。実績のある塾が近所になかったためです。さらに、塾が高級住宅街近くにあるため、みすぼらしい格好をさせられないと思い、そこそこの値段がする服を着せているほか、帰りが遅くなるため食費も渡しています。

また、どの学校に通わせればいいかといった情報収集のため、奥さんは〝ママ友会〞にも参加しています。こうした諸々の費用を含めると、毎月の教育費は20万円を超えていました。

しかし奥さんは専業主婦で、収入は田村さんの手取り40万円しかありません。そのため家計は毎月赤字。貯蓄とボーナスから補てんし、どうにか支払っている状況で、「これではやっていけないかもしれない」と、家計相談に訪れたのです。

赤字家計は教育費のせい?

家計相談の経験からいえば、大なり小なりこうした状況に陥っている家庭は多いというのが実感です。家計が赤字に陥っている家庭は、教育費の占める割合が大きくなり、生活を圧迫していたりします。

例えば首都圏で中学校受験をするケースで、小学校4年生から週2回程度塾に通うとして、6年生までの3年間で教材費や集中講座などの費用も含めて、トータル250万円程度は見積もっておく必要があります。
 
しかし、こうした費用を払えたとして、無事、私立中学に入学できれば、その後には授業料や教材費といった費用がかかってきます。

合格させることに必死になるがあまり、その後の費用については考えておらず、「やばい、払えない」となって、慌てて教育ローンを申し込む人すらいるのが現状です。

住宅ローンを抱え、生命保険の保険料なども支払っている状況で、教育ローンまで借りてしまうと、その返済が重くのしかかり、家計は逼迫してしまいます。これでは本末転倒です。

さらにいえば、中学校入試の後には、高校や大学への進学も控えており、さらに多額の費用がかかります。つまり、教育費は長期的な視点で見なければいけない費用なのです。

教育費は収入の10%以内に

私の感覚では、家計に占める教育費の割合は概ね5~10%程度だと考えています。

例えば月の手取り収入が40万円だとすれば4万円が〝上限〟だと思っておいてください。そうしなければ教育費で家計が破綻し、目も当てられない事態になります。

一方で、教育費破綻を避けるため、家計のリストラも必要です。特に〝メタボ家計〟に陥っている家庭は必須です。通信費や被服費などを見直し、将来の負担に備えておく必要があります。

田村さんの家庭でも、スマートフォンを格安スマホに切り替えたほか食費も削減、塾についても授業料が安い塾に変更しました。その結果、どうにか収入の範囲内で収められるようになったといいます。

【ココがざんねん】
教育費に上限を設けていない家庭は多く、特に裕福な家はあれもこれもとなりやすいです。教育費は家計の10%以内、さらに進学等の費用も視野に入れ、計画的に考えていきましょう。

奨学金返済の肩代わりで老後資金がなくなる

奨学金破産が急増中

文部科学省などの調査によると、大学入学初年度にかかる入学金や授業料などの合計は国立大学で約84万円、私立大学では約133万円。

卒業までの合計になると、国立大学で約243万円、私立文系で約397万円、私立理系で約540万円に上りますから、かなりの負担となります。

一方で、親の収入はバブル崩壊後、長らく上がっていませんから、仕送り額の減少傾向はとどまりません。そのため2人に1人はなんらかの奨学金を借りているというのが現状です。

そのようななか、近年、奨学金の返済滞納が社会問題となり、奨学金を運営している日本学生支援機構をはじめとする各機関は厳しい回収に乗り出しました。

実際に、滞納1~3ヶ月ほどで本人や保証人へ電話による督促や通知がなされた後、債権回収専門会社による取り立てや、個人情報の信用情報機関への登録といった措置が取られることもあります。

なかには、月の返済額が10万円にのぼって返せず延滞、取り立てで追い込まれて「奨学金破産」に陥る若者も急増しています。

近藤さん(54歳/男性)の場合……
「借りた奨学金をいつまで私たちが支払わなければならないのでしょうか。子どもたちに相談しても、今は払えないというばかりで。これでは老後の生活が不安でなりません」

50代も半ばにさしかかってきた会社員の近藤さんは、3人の子どもに惜しみなく塾や習い事をさせて育ててきましたが、2人目の子どもが大学に進学した頃から家計が苦しくなり始めて仕送りができなくなり、2人目と3人目の子どもには奨学金を利用させました。

現在、3人の子どもは皆独立。会社員として働いていますが、まだ働き始めたばかりで給料は安く、「奨学金を返済してもらえないか」と泣きつかれ、2人分で月に合計4万3000円ほど返済しています。

近藤さんの収入は手取りで35万円ですから、どうにか返済できないこともないのですが、貯蓄に回すお金はなく、一向に増えません。年齢的にも老後資金が心配になり、「どうにかならないでしょうか」と家計相談に来たわけです。

子どもに払わせるしかない?

「借りたものだから返すのは当然」
「借りる時点でもっと慎重になるべき」

といった声もありますが、大学に入学するだけで一所懸命の学生に、大学卒業後どんな職業に就き給料をいくらもらえるのか見通せというのも酷な話ではあります。

こうした現状ですから、親が子どもに代わって返済するケースが増えているのですが、親にも貯蓄がなく苦しんでいる家庭も少なくないわけです。

また最近では、「老後は子どもの世話になりたくない」と考える人も増えてきました。しかし、奨学金の返済によって老後資金が枯渇し、結果、子どもの世話にならざるを得ないといった家庭も増えています。

そうなりたくなければ、老後資金を早い段階から貯めておく必要があったのですが、子どもの将来に期待し、教育費をかけ過ぎてしまっていたために、気づいたときにはすでに遅しということになりやすいのです。

そういう意味では、収入がたいして増えないことを前提として、将来かかる子どもたちの費用を早い段階から見通し、資金計画を立てておく必要があります。

しかし、近藤さんの家庭のように、老後が迫ってきていてはそれも難しいでしょう。となると、むだ遣いをやめて家計を見直すとともに、やはり子どもたちに奨学金を返済させるしかありません。

今は給料が安いでしょうから、しばらくの間は親と子どもの〝ツインカム〟で返済し、将来、子どもたちの給料が増えてきたら全額返済してもらうというのが現実的ではないでしょうか。

昔、消費者金融のコマーシャルには、最後に必ず「ご利用は計画的に」というコメントがありました。奨学金の利用も同じで、「ご利用は計画的に」が理想です。

【ココがざんねん】
今の家計ばかり見てやりくりしていると、老後資金が枯渇しかねません。特にお子さんを抱えるご家庭は、将来かかる費用を早い段階から見通し、資金計画を立てましょう。
 

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横山光昭
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表。お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の問題の抜本的解決、確実な再生をめざし、これまで15,000 人以上の家計を再生した。個別の相談・指導で家計の再生と飛躍を実現する活動は業界でも異端児的活動で、各種メディアへの執筆・講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000 円投資生活』(アスコム)や『年収200 万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は累計300 万部となる。お金の悩みが相談できる店舗を展開するmirai talk株式会社の取締役共同代表を務めるなど、個人のお金の悩みを解決したいと奔走するファイナンシャルプランナー。
 

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