(本記事は、横山光昭氏の著書『となりの家のざんねんなお金の話』=あさ出版、2019年4月28日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

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スマホ決済使いまくりで預金が激減

ポイント還元に踊らされ

近年、スマートフォンアプリによる決済の利用が急激に増えています。

2018年は「LINE Pay」が「コード決済」を開始して利用者を増やしたのをはじめ、同年の12月には支払額の一部または全額相当を還元する「100億円あげちゃうキャンペーン」で華々しく「Pay Pay」が登場。「キャッシュレス元年」と騒がれたのも記憶に新しいところです。

ただ、そんなキャッシュレス化の波に乗って〝お得な生活〟を送ろうとしたものの、キャンペーンに踊らされて蓄えが激減してしまった人もいるようです。

山口さん(37歳/男性)の場合……
「結局、いくら使ったのか、わからなくなってしまったんです」

山口さんは、独身の会社員。限られた収入を有効に使いたいと考え、キャッシュバックやポイントが付与されるキャッシュレス決済を積極的に活用していました。

しばらくは、利用額の2%のポイントがつく「LINE Pay」を愛用。コード決済利用でポイントが5%になってからは、コード決済も積極的に使っています。そして、「PayPay」もスタートと同時に使い始めました。スタート時には、全自動掃除機やベーカリー、そして炊飯器まで、合計20万円余りの買い物をしました。

それだけでなくコンビニでも利用し、キャッシュバックの上限金額である25万円近くまで、何度か買い物をしたといいます。

ところがです。こんな生活を続けて迎えた年末、親に何か買ってプレゼントしようと考え、銀行でお金を引き出そうとしました。

すると、思っていたほどの残高がありません。

ボーナスも入ったはずですし、毎月の給料の残りもあるはずなのに、思っていたより50万円も残高が少なかったのです。「ポイントやキャッシュバックでお得な生活を目指していたはずなのに……」と山口さんは慌てていました。

なぜこうなってしまったのでしょうか。

キャッシュバック欲しさに無意味な買い物まで

現在、キャッシュレス化に向けて、さまざまなサービスが提供されています。ただ、日本のキャッシュレス決済の利用率は他国と比べてまだまだ低く、2015年時点で中国の利用率は60%前後に対し日本は20%程度、韓国にいたっては90%近くにも及びます。 政府は、2020年までに利用率を40%まで引き上げようと、国を挙げてのキャッシュレス化の促進に努めている最中です(2019年3月現在)。

しかし、ポイント還元やキャッシュバックなどといったキャンペーンの言葉に、「絶対にお得だ、使わないともったいない」と踊らされ、深く考えずに使いまくると、思わぬ〝落とし穴〟が待っています。

というのも、ポイント還元やキャッシュバックを受けることが楽しくなり、買う必要のないものまで買ってしまうなど、サービスを受けることが〝目的化〟してしまう人が少なくないのです。

さらに、深みにはまってしまうと、サービスの種類が多様であることもあって、どのサービスをどれだけ使ったのか管理ができなくなってしまうといった人も。

山口さんも、ポイント還元やキャッシュバックを受けたいがあまり、余計な買い物をしていました。しかも、買った掃除機はほったらかし、ベーカリーも炊飯器も大して使っていませんでした。

こうなると、キャッシュバック狙いの支出は、もはや〝浪費〟でしかありません。相談時にも、「いくら使ったのかわからなかった」と反省していました。

山口さんは、これらのサービスを利用するに当たり、銀行口座とひもづけしていましたが、口座のお金が減ると、「買い物ができなくなるのではないか」と不安になり、補てんを繰り返していました。

これでは貯蓄が減っていって当たり前です。

たとえキャッシュレス決済が中心になっても、何にいくらを支払っているのかしっかり把握しておくことが必要です。

家計簿アプリなど、自分に適したアプリを1~2個選び、支出状況を把握しておきましょう。

今後、ますますキャッシュレス決済は増えていきます。キャンペーンに踊らされることなく、それぞれの特徴を冷静に見極め、お金を管理していきましょう。

【ここがざんねん】
キャッシュレス決済が中心になると、支出の把握がしづらいうえに、ポイントなどに夢中になるとむだな支出まで増えてしまいます。スマホの家計簿アプリなどできちっと管理しましょう!

つまらぬ見栄で格安スマホに切り替えず大損!

家計の重荷になっている「通信費」

ここ数年、家計相談の現場で気づくことがあります。それは、スマートフォンやインターネット回線、固定電話の費用といった「通信費」の家計に占める割合が大きく、家計を圧迫している家庭が多いことです。

そうした家庭に限って、家族全員が大手キャリアのスマホを使っており、大損しているケースが少なくありません。

太田さん(38歳/男性)の場合……
「毎月の家計が赤字になって困っています。何が原因なのでしょうか」

太田さんは、奥さんと中学生の子ども2人の4人家族。毎月の家計が赤字で困っていると、奥さんを連れて家計相談にやって来ました。

さっそく、家計の状況を聞いてみると、スマホやインターネット回線の費用、つまり「通信費」が重くのしかかっていました。

それもそのはず。4人全員が大手キャリアのスマホを使っており、一家の通信費は1ヶ月になんと3万6000円もかかっていたのです。

私はそんな太田さん家族に、格安スマホへの乗り換えを提案しました。

しかし、太田さん本人はあまり乗り気でないよう。

どうしてでしょうか?

男性は見栄で生きている?

1人1台は当たり前、なかには2台持ちする人もいるほど普及したスマホ。昨今は、通信料金や機種代も安い〝格安スマホ〟も登場していますが、太田さんのように大手キャリアから切り替えられない人が少なくありません。

切り替えない理由としてよく聞くのが、「今は、機種変更する時間がない」というもの。家計相談に来る時間はあるのですから、そんなはずはないのですが……。

このような回答をしがちなのが、スーツをきちんと着て真面目そうで〝保守的〟なサラリーマンです。そんな人が決まっていうのが、「格安スマホに変えるのはいいと思うのですが……」なのです。

本当の理由は別にあります。例えば、

「大手以外のキャリアを使うと、ケチだと思われ恥ずかしい」
「格安スマホはつながりにくく、データ通信や音声通話の品質も悪いのではと不安」
「機種変更する際に発生する解約金がもったいない」
「大手キャリアに相談したら、拒否されそうだ」

などなど。どれも根拠のないものばかり。

家計をリストラする手段として格安スマホを紹介すると、女性、特に専業主婦の方は、素直に受け入れてくれます。すぐさま家電量販店などに行って相談するなど、具体的に行動に移す人も少なくありません。

そして、数ヶ月間使ってみて、使用感は大手キャリアと大して変わらないことや、解約金も2~3ヶ月もあれば元が取れてしまうこと、そして今までより家計のやりくりが楽になることなどを口にし、「もっと早くやっておけばよかった」といいます。

賢い人は情報収集して切り替えている

もちろん、誰もが変えればよいというわけではありません。

仕事で使う場合や、通話をたくさんするといった人は、今までのキャリアとの契約をそのままにしておいたほうがいいでしょう。

しかし、多くの場合、「元を取った」といえるまで使い込んではいないのが現状ですから、格安スマホに変えたほうがいい人は少なくないでしょう。

太田さん一家の場合、家族4人そろって格安スマホに切り替えると、スマホにかかっている費用は1万3000円まで下がり、2万3000円浮きます(スマホの利用料金は2019年1月時点の各キャリアの料金を参考にしています)。

これだけ浮けば、家計の赤字解消にも貢献するでしょうし、コツコツ貯めて遊びに行ったり、投資に回したりすることだってできるでしょう。

しかもです。この先30年間、格安スマホを使うと仮定し、節約できる金額を計算してみますと、なんとその合計は828万円にもなります。

浮いたお金を投資信託で積み立て、年利3%で運用できたとすると、運用益は30年で約512万円となり、約1340万円もの「資産」を作ることができます。この数字を見ても、読者の皆さんは大手キャリアのスマホを使い続けるでしょうか。

確かに、格安スマホは無料通話分が十分ではないなどのデメリットはありますが、今や、多くの無料通話アプリがあり、それを使えば十分通話ができます。音質だって、決して悪くありません。
 
男性でも、家計相談の経験上、普段規則に縛られているサラリーマンより、自営だったり自由業などに就いていたりしている人のほうが、格安スマホに乗り換えてくれる傾向が強い気がします。自分の頭で考えて「得になる」と思えば、たとえ新しいことでも柔軟に受け入れることができるからでしょう。

ここまで格安スマホの話をしてきましたが、何もそれに限った話ではありません。家計を改善するためには、生活上の知恵やお得な情報を上手に取り込むという視点を持ち、実行に移すことが重要です。

スマホの話は、あくまでその代表例。家計がざんねんな人たちは、いつまでたっても習慣にしばられて抜け出せず﹆新しいことを受け入れられない人たちだといえます。

【ココがざんねん】
つまらぬ見栄に起因する根拠のない言い訳をしていませんか?
本当に必要なら、そう考える理由を人に話して意見を聞いてみることも時には必要です。

部下におごって貯められない〝男気上司〟の勘違い

部下思いなのか? どうなの?

「若いころ、よく上司に飲みに連れて行ってもらって励ましてもらい救われた。自分もその立場になったのだから、部下を飲みに連れて行ってやろう」

こんなことをいってくれる上司、いいですよねぇ。男気にあふれ部下思い。うらやましい限りです。しかし、男気を出しすぎると、自分自身の首を絞めかねません。

近藤さん(45歳/男性)の場合……
「給料は上がっているんですけど、お金がまったく貯まらなくて……。老後が心配です」

そう悩んでいるのは、営業職で独身の近藤さん。今の会社に勤めて23年になり、そこそこのポジションになりました。

そんな近藤さんは、若いころに上司に飲みに連れて行ってもらい、励ましてもらった経験から、「自分もおごる立場になったのだから」と使命感に燃え、部下を飲みに連れていました。

しかし、ここのところ一向に貯蓄が増えないことないことに頭を悩ませていました。45歳にもかかわらず、銀行には預金が260万円しかありません。若いころと比べて給料は1・5倍に増えているのに………。

どうしてなのでしょうか?

上司の誘いはありがた迷惑?

このような〝男気サラリーマン〟がお金を貯められない原因は、ひとえに「交際費」が大きくなっているからです。

しかし、時代は変わっています。近藤さんは、「仕方がなくて必要な支出」だと主張しますが、今は、上司が部下を飲みに誘わなければならなかったり、おごったりしなければならない時代でもなくなっているのです。

というのも、飲みに連れて行かれる側の若者たちが、まったく違った価値観を持っている場合も少なくないからです。

例えば、こんなふうに思っている若者も少なくありません。

「おごるから飲み会に付き合えって、楽しくもないし、ほんと迷惑な話だよなぁ」
「仕事はきちんとやっているんだから、プライベートの時間まで奪わないでほしい」
「説教ばかりでつまらない。仕方がなく付き合っているのに気づかないんだよなぁ」

近藤さんは偶然、駅前の喫煙所で若いサラリーマンたちがこんな愚痴をいっているのを聞き、「自分のことをいわれているように感じて耳が痛かった」といいます。

つまり、良かれと思ってしていたことが、かえって余計なお世話、ありがた迷惑になっているというわけです。

支出のコントロールを趣味にする

当然のことですが、男気を出すのをやめ、部下におごらなければお金は貯まります。家計相談に来た近藤さんにも、「飲み会は誘われたときだけ参加し、会計の際は全額おごるのではなく、少し多めに払う程度でいいのではないか」とアドバイスしました。

その結果、飲みに行く回数も減り、交際費も大きく削減できたといいます。すると、近藤さんに大きな変化が起きました。関心が、部下におごることから「支出を減らすこと」に向かい始めたのです。

例えば食生活は、レトルト食品にしたり、割引された総菜を買ってきたりして、自宅で食事する生活に変わりました。

すると、食費は以前の3分の2ほどに減りました。

そのほかにも、格安スマホに切り替えたり、安い電力会社に乗り換えたりするなど、さまざまな節約方法を試すことに喜びを感じ、新しい〝趣味〟のようになったといいます。その結果、貯蓄も少しずつ増えていきました。
 
近藤さんは独身男性でしたが、読者の皆さんのなかには「うちの夫も毎晩飲み歩いて……」と思った方もいるのではないでしょうか。

確かにサラリーマンとして部下の面倒を見ることは大事なことです。だからといって家計を圧迫してまで交際費に費やしてしまうのはいただけません。

夫が家計に無関心な家庭は、得てしてお金を貯められないことが多いです。部下とのコミュニケーションと同様に、家計について夫婦でコミュニケーションをとることも大事なことなのです。

【ココがざんねん】
「ありがた迷惑」なことに気づけず浪費してしまうほどトホホなことはありません。それが家計を圧迫してまでもとなると目もあてられません。

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横山光昭
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表。お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の問題の抜本的解決、確実な再生をめざし、これまで15,000 人以上の家計を再生した。個別の相談・指導で家計の再生と飛躍を実現する活動は業界でも異端児的活動で、各種メディアへの執筆・講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000 円投資生活』(アスコム)や『年収200 万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は累計300 万部となる。お金の悩みが相談できる店舗を展開するmirai talk株式会社の取締役共同代表を務めるなど、個人のお金の悩みを解決したいと奔走するファイナンシャルプランナー。
 

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