不安定だった湘南の撤退守備
この試合を見た限り、湘南の撤退守備の練度も低く[4-4-2]の布陣が機能していたとは言い難い。2トップと中盤、及び中盤と最終ラインの間が広がる傾向が強く、このエリアを基本布陣[4-1-2-3]の川崎Fの脇坂、山本悠樹、橘田のMF陣に使われていた。
前半27分には、川崎FのFWエリソンが湘南の最終ラインと中盤の間を突き、そこから惜しいミドルシュートを放っている。ここでは湘南のDF大岩一貴(センターバック)が相手FWマルシーニョの対応に追われてエリソンに寄せられず、茨田と田中の2ボランチによるエリソンへのアプローチもできていない。撤退守備時の最終ライン、中盤、最前線の3列の距離感やマークの受け渡しの修正は急務だ。
湘南はロングパスを多用
湘南は昨2023シーズン、GKや最終ラインからのパス回しに力を注いだものの、相手の前線からの守備(ハイプレス)を掻い潜るための配置を整えられず。ゆえに危険なボールロストを繰り返し、試合の主導権を相手に渡してしまうケースが多かったが、今回の川崎F戦ではGK富居大樹がロングパスを多用。これにより自陣でのボールロストを防止する意図が窺えた。
富居によるこの試合2本目のロングパスは川崎FのDF三浦颯太(左サイドバック)方面に飛んだが、それ以外は基本的にアウェイチームの2センターバック(大南拓磨と高井の両DF)付近に落ちている。仮に富居のロングパスが相手センターバックの背後に落ちたとしても、このスペースは相手チームのGKが飛び出して対応しやすい。また、相手センターバックにロングパスを弾き返された場合、このボールがそのまま相手チームの速攻や中央突破に繋がりかねない。ロングパスの送り先は、相手にボールが渡ったとしても速攻に直結しにくく、相手GKとしても飛び出しづらいサイドバックの背後を原則とするのが得策だろう。
ロングパスが失点の原因に
前半24分の川崎Fの同点ゴールは、湘南のGK富居のゴールキックが自陣に落ちたことで生まれたもの。このボールを回収した川崎Fが速攻を仕掛けると、MF家長昭博の横パスを受けたMF脇坂が、ペナルティアークの後方からミドルシュートを放つ。これがゴールネットに突き刺さった。
自陣でのボールロストを回避するために繰り出したはずのロングパスが、失点の原因となってしまった湘南。先述の通り、ボールの送り先を再考する必要があるだろう。
後半11分には、DFキム・ミンテのバックパスをペナルティエリア内で受けたGK富居がボールコントロールを誤り、突進してきた相手FWエリソンにボールを奪われてしまう。この直後のエリソンのシュートが無人のゴールへ吸い込まれ、これが決勝点となった。